2017年3月30日木曜日

おわりに


いよいよ帰国するので、このブログは今回で最終回。

本Blogは、あくまで「ケンブリッジで暮らす一年」の記録用に作ったもの。ひとまずは、ここで区切りとしたい。

それにしても我ながらマメに「長い記事」を書いてきたものだ。

これだけ書いたのは、ひとえに自分が「忘れっぽい」人間であることを自覚しているからだ。

常日頃から、継続的に新しいものを取り入れて行くためにも、過去のことは記録をして順次脳内ワーキングメモリーから棚上げしていこう、と思っている。

このブログは(こちらで経験したことの全てには程遠いのだが)そのための良いアーカイブになった。東京でもまた新しい何かを追いかけて暮らして行くと思うが、それはまた別の話。

ご愛読頂いた方にはありがとうございました。

実生活でご縁のある方、リアルライフでよろしくお願いします。


2017年3月27日月曜日

未来志向



組織人事コンサルタントとして、日本とアメリカの両方の小学校を中から見ることができたのはとても幸運だった。

色々な違いを認識した。

集団主義 vs 個人主義 等々色々あるが、重要なことは結局何だったのかな・・と思った時に、この地域の学校教育の特徴の一つは「未来志向」である、ことに思い当たった。

ここ、ボストン(ケンブリッジ)は幾つかの特徴がある。「歴史的にアメリカの先頭を切ってきたという自負がある街」「テクノロジー(MIT、ハイテクベンチャー)の街」「経済的に余裕のある街」「学生が多く、年齢層が若い街」などだ。だからこその特殊状況とは思うが、ここの人たちはとても「未来志向」だ。

(注:大統領選結果から分かるようにこれはアメリカ全体での傾向ではない。もっというと、当地は世界的にも異常値なほどの未来志向だと思われる。ここか、NYかカリフォルニアか、くらいの感じだろう。)

子供に対して「夢を持て」と奨励し、それを語らせる。学校の掲示板でよく「夢」を書いている掲示を見た。自分個人の夢、社会としての夢、コミュニティとしての夢、を分けて描かせていたのも感心した。

同時に、大人も「(これまでの過去とは違う)どういう社会を作りたいのか」「自分たちがどうそれを作って行くのか」という未来志向を持つ人が多かった。一例を挙げれば、"差別のない社会"は、昔には当然なかったことだが、将来はそれを実現するんだ、と言うようなことを真面目に考えている人が多い。(この辺の人達は本当に真面目だな、と、特に小学校を見に行った時に感じることが多かった。)

更にMITなどでは「こうした変化はテクノロジーを絡めて実現していけばいいんだ!それをリードするのが自分たちの役割だ!」という気概を感じることができた。(一歩間違えば「上から目線」との批判も受けるだろう)

バンカーヒルの古戦場。ボストン人には「そもそもイギリスと戦いだしたのは俺たちだ」という何かがある。薩長のプライドみたいな感じ?


対する日本の教育に未来志向が無い、とは決めつけたくはない。日本の小学校でも将来への夢を語らせることはあるだろう。ただ、「自分が将来こうなりたい」と言う以上のものを語らせているだろうか。

そして、特に道徳教育関係の話題を聞くに「ちょっと違くないか?」と思うことが多い。「懐古」色が強く、未来を構想していない気がするのだ。

実際、先週、子供の区立小入学準備で読んだ、東京都の外郭団体が作る道徳資料に「先人や目上の人を敬う心を育てよう」とあったのには、脱力してしまった。

これが東アジア儒教文化の大事なところであるのはわかるのだけれど、これだけ物理的に年寄りの比率の多い日本で、今更子供に敢えて言うことではないと思う。一万歩譲って、そう指導するなら「若い人に元気がない」などとは言ってはいけない。個人的に日本の伝統や文化は大好きだが、それと「おじさんが気持ちいい社会」への回帰は違う。

自分は若い人には「先人や目上の人を敬いましょう。誰を敬うかは自分で考えて決めろ」と伝えたい。


自らもおじさんに差し掛かった自分が、そんなことを考えたのも、ここでの生活のお陰かもしれない。

半年通ったボストンバレエスクールの「お約束」。Show Respectは多分、to each otherだと思う。

2017年3月25日土曜日

駐在夫の英語学習物語 〜一年経って思うこと〜


駐在夫(妻)は、自分の仕事の都合で外国へ来るわけではないので、語学は自主的に勉強しない限りは、全く上達しない。一言も英語を使わないで数日を過ごすことは簡単にできてしまう。それだけに自分での工夫が必要になる。そして、英語力の高低により現地経験の質が左右されるのも事実だと思う。

自分がやってきたことで、これは正解だった or こうしておけば良かった・・・ということが幾つかあるので、誰か同じような境遇になる方の参考になれば、と振り返りを記しておきたい。(とはいえ、場所や期間などの変数により色々異なって来る点は自己責任で調整下さい)

  • 日本のテレビ放送は契約しなかった。ただし、ストイックな禁欲も疲れるので、Youtubeやラジオで日本語のニュースなどは摂取していた。それで良かったと思う。
  • 日本を出る前に、それなりに英語力の下地を作ってきたことは良かった。具体的にはドラマを英語字幕で見てあまりストレスなく楽しめるレベルまで は自力で上げておいたことが良かった。(そこまでどうやって上げるかは別問題として、そこまで上げておくと次のパラグラフで書いたことが可能になる)なお、もう一つの事実として、英検1級には渡米半年以上前に合格していたが、それでもこちらでの日常生活はかなり不便だった。英語の世界は甘くない。
  • 自由時間を活かして、海外ドラマをフレーズを書き取りながら英語字幕で見まくったことは良かった。海外の生活、日常の英語は、ドラマや映画を見るのが一番力がつく。とは言っても、英語字幕で見ても「早すぎる」「単語が分からない」実力だと効果が上がらない。このため、上述の基礎力をまず養成することが必要。そして、このドラマウォッチングをやったのが、渡米半年以上経ってからだったことは反省点。到着後早い段階でやるべきだった。(当初はなんとなく、家でドラマ見てたらダメかな、、と思っていたのだがそれは誤りだった)
ボストンの多言語バス案内。残念ながら日本語無し。内容はKnow your rights。この辺りがリベラルらしい。

  • 一日50分のSkype英会話。最後の4ヶ月、一日50分やったが効果があった気がする。実は最初の4ヶ月は一日25分だったのだが、これは効果に限界があった。1日50分、100分と、初期に固めてやることが有効だと思う。
  • 結局、ドラマもSkypeも「特に到着初期に一日の時間の量を上げる」がポイントかと思う。(自分の場合は、環境に慣れたり色々探索していてなかなかこれが出来なかった)
  • 映画や音楽は現地のものを楽しむようにする。これは子供達も乗ってきてくれて、彼らのクラスルーム会話にも役立ったようだ。「今度〇〇の映画見るよ〜」とか、やはり子供は話しているようだ。
  • TOEFLの勉強もした。これはこれで試験を「締め切り効果」として使えるので有効。ただし、かなり「試験固有」の対策(多少実践英語とは異なる)に時間を費やすことが必要となるので、それに対する覚悟が要る。
  • 学校のPTA活動は、責任重大なわけでもないし、ダメでもともとで参加してみるのはいいと思う。ネイティブの議論、会議というものをリスクフリーで経験できる良い機会。
  • あと、こちらのネイティブの自然な日常会話を学ぶなら、All Ears Englishが最上だと思う。来る前から知っていたPodcast番組ではあるが、色々聴き比べ、ボストンで1年過ごした上での、個人的な実感結論だ。(ただし、日本人がネイティブの自然な日常会話をいきなり学ぶ必要は必ずしもない、と言うのも事実なわけで。この辺りが英語学習の難しいところ。) 

駐夫英語勉強法は可処分時間の問題を除けば、実は日本に居ても出来ることが大半だ。

僕が英語を本気で再勉強しだしたのは37歳(今から4年前)からだった。帰国後、時間があれば中年からの英語独学法を、体系的にまとめて見たい。

2017年3月24日金曜日

キックボクシング&指圧 in Boston


そろそろ帰国が近づいているので、ここにもまとめ的な内容が増えている。

しかし、格好つけた総括よりも、自分くらいしか書かないようなマニアックなことこそ書いておいた方がいいかもしれない(誰かの役に立つかもしれない)、と思い今回のエントリを記す。

主夫として時間があったので割と色々なことを試したが、ここ数ヶ月、キックボクシングと指圧に少し通っていたことがある。

キックボクシングの方は、大手のチェーン店で、チェーン自体が「格闘」と言うよりは、完全に「フィットネス&ストレス発散」目的で展開しているところだった。

驚いたのは、女性客がとても多く、皆嬉々としてサンドバックに打ち込んでいたことだ。自分も練習中、何か別種の闘争本能が目覚めた。数あるフィットネスの中からあえてこれを選んでくる女性はやはり少し恐ろしい。

あと、ここのチェーンのビジネス展開(ビジネスモデル)が、ITの徹底活用とプログラムのパッケージング化、低コスト運営化をすごく工夫していたところが、コンサルタント的には目についた。一つの店舗を朝晩、二人だけで回していた。




それから指圧。

秋口に心身ともに不調(海外生活は結構疲れるのです)に陥りかけた際に、Harvard Square Shiatsuというところへ一か八か、藁をもすがる思いで行って見たら、指圧師の人が非常に上手で、救われた。

一応、クリニックを調べる際に「長い期間営業しているところ」という観点では調べたのだがそれが正解だったようだ。客のついている老舗は安心できる、のは万国共通と思われる。このRoger先生は、ボストンで日本人から指圧を学んだそうで、なんと日本には行ったことが無いという。「一回ぜひ、日本来なよ」と勧誘しておいた。施術スタイルはごく普通で日本でいうと指圧というよりも整体的な感じだった。



この先生は元々はエンジニアだったそうだが「自分は競争的な世界に向いていない、人を癒す仕事がしたい」ということで指圧師にキャリアチェンジしたそうだ。そういえば、自分が日本の杉並でお世話になっていた先生も同じようなご経歴だった。何かの縁かもしれない。ちなみに、施術料は今1時間70〜80ドル。(去年から10ドル値上がりした。インフレ経済とはそういうものなのか。)ボストンの物価はそんなもの、という物差しとして適切な情報かと思う。

ちなみに、鍼の看板もよく見かけたけど、行く機会はなかった。あと、よくわからないReiki (霊気)ヒーリングという看板も時々見かけ、日本にルーツがあるらしいので気になったが、訪ねる前に時間切れとなった。

強引にまとめると、こういう産業・選択肢が充実していることは、少なからぬアメリカ人がストレスを感じている、ということの証拠かもしれない。

2017年3月22日水曜日

駐在主夫経験による「日本から持ってきて良かった」Best 7


今住んでいるところは都会ではあるし、ネット通販も盛んなアメリカで「わざわざ日本から持ってくる」必要があるものはあまり無いのだが、それでもやはり「日本から持ってきて良かった」ものはある。

「食品のラップの類は日本製じゃないと納得できない」とか「子供用の風邪薬は日本製」「100円ショップグッズ」など諸々細かいものはあるのだが、ここは一年間生活という前提の「駐在主夫」目線で、7つに絞って順不同であげてみる。

公立小学校の廊下にある標語。なんとも自己啓発の国アメリカらしい。「仕事でもそうだよな」と日本のオッサンも思う。


炊飯に、煮込みにマルチに使える。10年来の愛用クルーゼがこちらでもガンガン活躍してくれた。日本にいたとき以上にほぼ毎日使った。それなのに全くヘタレずにドンとしているところが頼もしい。

アメリカは結構テール系の肉や骨付肉を売っているので、煮込むのに使える。玄米を炊いたりもできる。週に1度は必ず活躍してくれた。日本にいた時から愛用していたのだが、この圧力鍋はいい。ちなみに僕はアサヒ軽金属工業のファンで、オールパンも愛用中。

MacBookは持ち歩くことも多かったが、壊れずによく頑張ってくれて、無事に日本に連れて帰れそうだ。一方で、別の日本メーカー製ラップトップ(名は武士の情けで秘す)はあっという間に原因不明の故障で使えなくなった。悲しい。 
ボストン(ケンブリッジ)は街としてもアップルが似合うとは思う。(とはいえ、マイクロソフトのオフィスがあり、ここにもお世話になった)

Bluetoothのスピーカー。「音質にそれほどのこだわりはないが、でも、デバイスのスピーカーは嫌で、ラップトップやタブレットと自由に繋ぎたい」という自分のニーズに対してこれは最適だった。


日本のアマゾンアカウントを維持したまま(注)にして、日本語の本を20冊くらいは買って読んだだろうか。Kindle本はそれほど安くないのでちょっと贅沢な気もしたが本を読むのは投資と精神安定剤として必要なので、これは役立った。というか日本に帰ってもKindle癖が抜けなくなりそうな感じがある。Kindle unlimitedは期間限定で使用した。 

(注)アメリカのAmazonアカウントは別に作って使った。これは統合しない方が何かと便利だと思う。事前に気づいていて良かった。

外国生活は楽しいでしょう、と言われることが多いが、経験者の多くが言うように実はストレスが多い。風呂で同じエッセイ(特に池波正太郎と吉村昭)を何度も読むのは自分にとっては結構重要なリラックス方法なのでこれは必要だった。(ポイントは、自分なりのリラックス材料を日本から持ってくること)

アシックス スニーカー ロードジョグ
履き潰すつもりで一番ベーシックなものを持ってきた。4千円弱の同社最安値モデルで、重い靴ではあるが、とにかく頑丈だった。この 一年の7割はこの靴で済ませたのにまだ履けそうな感じがある。日本品質おそるべし。(どうやら既に商品ラインアップが変わってしまった模様)

2017年3月20日月曜日

異文化マネジメント系ビジネス書ならこの一冊


Erin Meyer "The Culture Map"  邦訳 エリン・メイヤー『異文化理解力』


以下の記事を昨年の10月末頃に下書きしていたのだが、今まで投稿していなかったので、そのまま投稿する。

ボストンのバックベイからMITを望む


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掲題の本は、異文化理解の分野では評判の良い本だったので、渡米前にすでに日本語版を読んでいた。その際にも面白い本だ、とは思ったのだが、渡米後半年経って色々経験した上で、改めて英語版で読んでみて、以前に読んだ時の何倍も内容が染み入ってきた。

1:提示されているフレームワークも良い。
2:事例も多くて読みやすい。
3:筆者のスタンスにも共感できる。

最後の点は、おそらく著者(現在は欧州のINSEAD教授)が、比較的田舎育ちのアメリカ人女性で、フランス人と結婚してヨーロッパに住んでいる、という事がその背景にあるのだろう。

僕個人は、この半年はある程度意識して徹底的に「アメリカに浸かる」ことをしてきたのだが、世界は当然「アメリカ」だけではない。そろそろ、相対化を始めても良いタイミングだ。本書で、著者が少し突き放しつつ愛情を持った感じで、世界的視野の中で相対的に「アメリカの特徴」を語る内容が、とてもこの作業に役立った。

アメリカ人が「ローコンテクストコミュニケーションで明示的な割に、批判についてはオブラートに包むところ」とか「愛想はとてもいいのだが、それは本当に心を開いているわけではないこと」などが、彼女のフレームワークを使いながら良く整理されている。これまで半年間のアメリカ人とのおつきあい、観察を改めて整理し、腑に落とすことができた。

もちろん、本書は「アメリカ」だけを書いているわけではなく、出てくる事例としては「オランダに赴任したメキシコ人マネージャーの悩み」「ポーランドの工場を管理する中国人管理職」といったとても全球的な内容を扱っている。

日本についてもかなり言及されているが、その部分の記述が日本人として違和感を感じる部分がほぼない。このため、他の国の部分も概ね正しいのだろうな、と本書全体に信頼を置くことができる。この信頼度の高さには著者のビジネススクールでの生徒とのディスカッションが豊富に反映されているのだろう。それにしても、この手の研究ではいつものことながら、日本のユニークぶりには軽くため息が出る。

異文化マネジメントの分野には古くはホフステッドの研究から、いろいろな本があるが、読んだ中では(今のパーソナルな状況のせいもあろうが)一番しっくりきた。

今住んでいるケンブリッジについていうと、学校や職場などは単純に「アメリカ」のカルチャーとは言えない。アメリカ人が半分強でその他は他の国から集まってきているというようなケースが多い。ここの人はそれを「国連状態」とか「ワールドカップ」とか言っている。そういう中でコミュニケーションする上でのヒントを本書からたくさん頂いた。

2017年3月18日土曜日

一年間聴いてきた音楽の振り返りと子供と楽しむための小ネタ


どちらかと言うと、パーソナルな記録用のエントリになってしまうが、この一年、こんな音楽を家庭のリビングで聴いていた、と言う記録。

10年くらい前から洋楽の流行にはついていけなくなっていたが、ここ半年くらいでキャッチアップできてきた。

音楽は記憶と結びつく。将来これらの曲を耳にした時、懐かしく思い出すだろう。

ちなみに以下を、一曲(日本のもの)を除き、Spotifyでプレイリスト化して家庭内で共有している。


Suger / Maroon5
渡米初期にどんな曲が流行っているのか分からず、「とりあえず」な感じで、ちょっと前に流行っていたこれをよく聴いてた。今思うと、「ボストンっぽさ」には欠ける曲ではある。

What makes you beautiful / One Direction
もはや懐メロだけどフェンウェイパークで皆が大合唱していた。娘がOne Directionにハマるきっかけとなった。


Sweet Caroline / Neil Diamond
これもフェンウェイパークでの合唱曲。メロディーも歌詞もいい曲です。映像はGleeのバージョン。


もぐらの唄/  Express 
Rソックス(当時)の田澤投手入場曲。フェンウェイパークでこれを聴いたのは衝撃だった。息子が一時期取り憑かれたようにPVを見ていた。


Fight Song / Rachel Platton  
大統領選のヒラリー候補の応援ソングだったので、2016年の8月から10月くらいによく聴いた。この頃はヒラリーが当選するものだと思ってた。



American Idiot / Green Day
結構昔の曲だが、「こういう単純なパンクソングは子供が好きだろう」と思って、 うちの小学生男子に教えたら案の定、喜んで聴いていた。Don't wanna be an American Idiot!


Try Everything / Shakira
映画"Zootpia"の主題歌。とっても啓蒙的で良い唄。自分ではShakiraは聴かないので、映画がきかっけ。


Praying for time / George Michael  
おじさん的には2016年末、ジョージ・マイケル死去にショックを受けた。再評価的に色々聴き直したら、この昔の曲が歌詞も含め心に染み入った。歌詞が2010年代を予言しているようで本当の天才だと思う。


How far I'll  Go /  Alessia Cara
ディズニーのモアナの主題歌。やはり子供はこれを好きになる。

Another day of Sun/ from LA LA  LAND
Spotifyを使い出してしまうきっかけになった曲。この映画の成功は曲のおかげ、というところがあると思う。


Can't stop the feeling / Justin Timberlake 
2016年、流行ってました。自分がこちらで色々見た上での勝手な解釈では、ジャスティン・ティンバーレイクはアメリカのキムタク。 


Bruno Mars / 24K Magic
2016年は、Bruno Marsの年だったのかも。なんとなく僕の考える正統派ミュージシャン。プリンスの後継的な位置付けを期待。 



Sorry / Justin Bieber
この曲もホントよくラジオ等々で流れていた。子供が学校の授業でこの曲で踊っているそうな。

I fell it coming / The Weekend feat. Daft Punk
これはごく最近流行っている。ダフト・パンクと若手のコラボ。自分がダフト・パンク好きなことを割り引いてもなかなか良い仕上がりの曲だ。 



最後に小ネタ。

こちらでは、ストリーミング等々で音楽を聴いていると、曲名の横に Implicit または Explicit と表示されていることがある。

最初は何だかわからなかったが、調べてみると要は歌詞の「露骨さ」のことで子供にきかせるのにちょっと不味いのはExplicitとなっている。この辺りはアメリカの方が神経質だ。

映画もR指定だけでなく色々なレーティングがあるし、予告編の最後には具体的にどういう刺激シーン(性的シーン、乱暴な言葉、残酷シーン)などがあるかが具体的に表示されている。これもこれまで気に留めなかったことがなかったのだが、確かに子供と一緒にエンターテイメントを楽しむ際には便利な仕組みだと思った。

2017年3月16日木曜日

塾で学ぶ


ボストンにはVogel塾という勉強会がある。

勘の良い方は、あの"Japan as No.1”を書いたエズラ・ボーゲル先生(ハーバード大学名誉教授)の名前、とピンとくるかもしれない。

昔、多少経営学をかじった私などからすれば、もう本当に「神様」みたいな方である。この勉強会は先生の名前を冠しているだけではなく、なんと先生自ら議論に参加してくださるものだ。(ちなみに、議論は英語ですよ…)

自分もありがたいことにこの会に約半年間、参加させていただいた。文字通り「身に余る光栄」としか言いようがない。

ご高齢の先生が今も、日本の若手研究者・ビジネスパーソンのために色々と骨を折って世話をしてくれたり、メッセージを発信してくださることに「頭が下がる」の一言。この勉強会自体が、ボストンに来ている日本人をつなぐプラットフォームでもあり、ここでは素浪人の自分にはその点でも本当にありがたかった。

ボーゲル先生は、戦後まだボロボロだった日本、経済大国へと上り詰めた日本、その後停滞気味の日本、を常に観察し分析されて来た。この半年の間、日本をどう見るか、アメリカをどう見るか、いくつかのトピックについて話をしてきた。期間中に、トランプ大統領の当選もあったことも印象深い。


自分が議論から受け止めたメッセージは「日本は内弁慶にならずに、もう一度、謙虚に外から学べ」「日本人は個々の組織・部門に閉じこもりがちだが、そのサイロを壊せ」ということだった。 

先生並びに運営の皆様に感謝。

2017年3月13日月曜日

Spotifyがヤバイ


<前提:僕の音楽プロファイル>
  • 音楽的にはCD世代。洋邦ジャンルを問わずCDを集めることに熱中した。結局800枚くらいは買った。ジャンル的には洋楽の方が中心。
  • 2000年代はiTunesを使い、CDをリッピングしてライブラリの構築に努め、3年くらい前に日本でiTunes Matchが導入されたタイミングでライブラリを全てアップロードしていた。これは海外引越しの際にも大きな安心材料だった。
  • ストリーミングサービスについては、ローンチ直後のAWAやApple Musicを試したことはあったのだが「試用」に留まっていた。あと、なぜかYoutubeで音楽を聴く、という習慣はなかった。
<Spotifyを有料契約したきっかけ>
  • 2016年の12月に見たLA LA LANDの音楽があまりにも良かったので入手したいと思ったところ、Spotifyに曲があるということを知る。
  • 最初はお試し月1ドル的なキャンペーンがあったので加入。

アンダーアーマー、勢いあります(本文とは無関係)


<Spotify契約後>
  • あっさりハマる。
  • 洋楽中心に新しい曲も含めて聴きたい曲がほとんど全てある。
  • 操作が簡単。スマホでもPCでもシームレスに使える。
  • 気分別のプレイリストなども便利。朝っぽい音楽、勉強用の音楽、寝る前はヒーリング、などボタン一つで選べる。
  • 有名人の作ったプレイリストなども楽しめる。自分で作って共有もできる。
  • 映画を見て帰ってきたらすぐにサントラが聞ける。
  • 少し試したことのあるAmazon Musicなどよりも使い勝手がいい。
ということで、「俺の20年を費やした800枚のCD収集はなんだったのか・・・さらに、苦労してiTunesMatchに昇華したことももはや意味がなかったように感じる・・・」というショックを受けているところだ。

ただし、以下の2点はSpotifyでは満たされない

1:日本の曲のカバー率が低いので例えば山下達郎やらサザンやらは聞けない。ここはこれまで作ってきた自分のライブラリが生きる

2:やっぱり「ラジオ」にある独特の風情(地域間、風土感)がない。雪が降っていたらそれを話題にして雪の曲をかける、といったようなことがSportifyには(少なくとも今の所)できない。

逆に上記2点以外は「Spotifyでいいや」という気分になっている。

Spotifyを使い出して2ヶ月くらいのタイミングで読んだのが音楽ライターの柴氏が書いた『ヒットの崩壊』という本。著者が同年齢ということもあってか、この本は大変刺激的だった。デジタル化と音楽ビジネスのここ20年の変化をまとめたこの本は、他業界にも適用可能な知見に満ちている。(日本のガラパゴス状態を数字で理解することもできる。)


「音楽で起こったことは他の分野でも全て起こる」(ケヴィン・ケリー) 

2017年3月10日金曜日

トランプ現象の「現地現物」は?


渡米してきた一年前は「オバマのアメリカ」だったのが、すっかり「トランプのアメリカ」という感じになってしまった。

幸か不幸か実際にはここボストンで具体的に何かが変わったということは感じないので、あくまで「イメージ」の問題ではあるのだが「イメージ」は大きい。

日本のテレビを見ていないので想像に過ぎないのだが、おそらく「トランプ大統領」を「変なおじさん」扱いして面白おかしく扱っているのだろうと推測する。

「それが面白いことは否定しないが、それだけでもまずい」と個人的には思う。また、トランプ本人を理解することよりも「なぜトランプが当選したのか」ということを現実に基づいて理解することが重要かと思う。多分仕事柄そんな風に思うのだろう。

その点で、大変勉強になった情報源を二つ紹介したい。

バンパーのステッカーに注目。おそらく所有者は白人さんでしょう。ちなみにその上の青いステッカーも笑える内容。

一つは朝日新聞の現地記者の方が足で稼いだ情報をまとめた岩波新書『ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く』。ミドルクラス、特に製造業の崩壊が如何に庶民を追い詰めているかがとてもリアル。党派色やあるべき論にとらわれず、ミクロな現実がしっかり記載されている。最後に進むにつれ、日本の将来を考えさせられる。日本企業で重要な判断をするような人には読んでもらうといいのではないかと思った。

もう一つは、シリコンバレーの若手起業家、サム・アルトマン氏のブログ記事:『シリコンバレー在住のリベラルな僕がトランプ大統領支持者100人と話して理解した「アメリカのリアル』。この人はもともと真面目な人なのだが、わざわざこういう活動(仕事と関係ないのに、トランプ支持者100人と直接話す)を自分でやってみる、という若者の構想力とスケール感に「カリフォルニアのアントレプレナーの本当の上澄みはレベルが違うなぁ(注)」と思った。ちなみに、Facebookのザッカーバーグ氏も選挙以降、アメリカの全地域を直接回って現業の人々との対話をしているようだ。

余談ながら、本当は、リベラル側がこういうことをやらないとダメなのだと思う。"あいつら頭おかしい"と説教したり、"なんでも反対社会党”路線を続けたら分断が深まるばかりだ。

帰国も近くなってきて、上記などを読みながら、日本のことを考えることが増えてきた。


(注)日本のビジネス界にはそもそも「三現主義」・「現場100回」といった良い言葉がある。こういう姿勢がフェイクニュースの時代にますます重要かもしれない。 

うちの前の道路に先日唐突にあった旗。言いたいことはなんとなく分かる。それにしても「文脈依存型」の訴えだ。

2017年3月7日火曜日

Netflixを試すなら…独断で選ぶ今の世界基準ドラマ3選



"Netflixのコンテンツそんなに面白いのか?"という質問をいただいたので、もう少しばかり。

ここのコンテンツが新鮮だったのは「有料直契約のため広告主に媚びる必要がない」「大衆が見る地上波ではない」ために結構エログロ描写が鮮烈であることだ。もちろん、単なるコケ脅しのような低レベルな描写は少なく、ストーリー上の必然性のある形で示されている。「映画や"日本のテレビ"では描けないね」という大人向けの内容を描くことができるので、そこが面白い。(そして、それに魅力を感じて一流の製作者が移動してきている)

具体的に何か見てみようかな、という人にはまず「ストレンジャー・シングス 未知の世界」をお勧めしたい。

2016年のNetflix独自コンテンツで全8話だが、アラフォー世代を中心に大人気となり、2017年11月のシーズン2公開が待たれている。人気の原因は、グーニーズ、ET、スタンドバイミー、X-fileを足して4で割ってちょっとオシャレにしたような、万国共通おじさんホイホイ、コテコテの80年代回顧調。そこを露骨に狙ってくるか、というビジネス的な戦略にも感心できる。描写があまりエグくない点も、ビギナー向けかと思う。一応ホラーではあるが、怖いうちに入らないレベル。(これ8話見て、1ヶ月1000円程度で解約しても十分ペイすると思う)

https://www.youtube.com/watch?v=_QVUSdg4-2U

続いて、僕が最初にNetflixで見た作品でもある「ナルコス」。

コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルを描いた実録物で、これは内容が「エグい」。超大人向け。80年代のコロンビアが怖すぎでトラウマになるレベル。しかし、作品のクオリティは映画レベルの高さ。パブロ・エスコバルはアメリカでは誰もが知ってる有名人(犯罪者)でもあり、そういう意味での「常識」を知ることもできる。なお、ドラマの半分はスペイン語シーンで、この辺にはヒスパニックへの拡大を狙うビジネス戦略が透けて見える。これを見たラテンアメリカの人は怒り出さないのだろうか、とは思うが。すでにシーズン2まである。このあとシーズン3と4を作るらしい。

https://www.youtube.com/watch?v=S5sdYE7a3KU


3作目はエグくない方に戻る。「ザ・クラウン」。

これはイギリスのエリザベス2世が戴冠する前後を描いた「大河ドラマ」的な内容。Netflixが最大の制作費を注ぎ込んだとかで、2016年のゴールデングローブ賞でベストドラマを撮った。その際、スピーチで企画段階から受賞を狙いに行った、と社長が話していた。受賞したいがために、逆算で世界一有名な主人公を選んで企画したらしい。主人公の女性(クレア・フォイ)は実物よりも美人。お話的には子供と一緒に見ることができるレベルながら、「皇室と人権」というテーマは重く(実は「退位」も一つのテーマになっているので)今の日本人こそこれを見たら良いのにね、とも思った。好評らしくシーズン2製作決定。

https://www.youtube.com/watch?v=at53Mhk8wg8


とりあえず、このくらいで。

(注:上の三つのドラマにも増してブレイキング・バッドは凄いと思うが、これはNetflixの自社制作ではない。あと、世界的な知名度・人気ではHBOが作っているゲームオブスローンズが最強。)

あと、Netflixは硬派なドキュメンタリー作品を自社でたくさん手掛けている点も補足しておきたい。「憲法第13条(黒人問題)」とか「ホワイトヘルメット(シリア問題)」とか。NHKスペシャルを更に乾いた感じにしたものが多い。こういうのを見るのも勉強になる。(ただし、公平に見て、NHKスペシャルは、ネットフリックスのドキュメンタリーと比較しても遜色ないと思う)

2017年3月5日日曜日

アメリカ世帯の4割以上が加入するNetflixにハマる



「アメリカでいろいろなサービスを利用することで日本の少し先の将来を予想してみたい」と、こちらに来る前から思っていた。実際に体験した中で個人的に「これは予想以上に破壊的なイノベーションだな」と思った一つがNetflixだ。

現在、アメリカを起点に「映画、テレビドラマからストリーミングドラマへ」という映像娯楽業界でのダイナミックな構造変化(予算と人材が動いている)が進行しているのだ。


Netflixのコンテンツ制作部門が入るビル(@L.A.)


それはともかく、これでドラマを見るのがラクで楽しくて仕方ない。僕は、10年ほど前に共働きの子育てに突入して以来忙しかったので「ドラマは見ない」方針にしていた。なので、日本のドラマはほとんど見ていないのだが、Netflixで見るアメリカのドラマ、特にNetflix独自制作コンテンツ"Narcos","The Crown","Stranger Things","House of Card"などは日本のドラマとは予算とクリエイターのレベルが違う次元に突入している。ちなみに、子供用のコンテンツもあって、子供もNetflixを愛用するようになった。

これだけ良いコンテンツがあって、月に10ドルという価格は他の業態と比較すると価格破壊以外の何物でもない。なお、自分にとっては「面白い」と思えるドラマが多かったので、お買い得感があったわけで、そう思わない人にとってはお得感は無いのかもしれない。しかし、とにかくびっくりした。

何よりNetflix上のコンテンツでハマってしまったのが、史上最強のTVシリーズとの評価もある"Breaking Bad"。このシリーズはNetflixオリジナルコンテンツではないのだが、とにかくこれの第1話に出来心で手を出したのが運の尽き、最後の第5シーズンまで(全部で62話 46時間相当)を爆走(binge watch)することになってしまい、一時期は、頭がBreaking Badのことで一杯になってしまう状態に陥った。視聴計画を立てPDCA管理で消化していく状況を、家人から酷評される始末。

ドラマは大体家で一人の時に見ている。しかし、「誰かとこれらドラマの話をしたい」という欲求は抑え難いので、Skype英会話の先生(ヨーロッパ人)を捕まえては、ドラマ話をしている。欧州人の先生たちも結構な割合でこれらを見ている。このことから、これらは「(アメリカだけでない)グローバルなエンターテイメント」だと実感する。ルーマニア人の女の先生からBreaking Badのトリビアサイトを教えてもらうなど、謎の交友が広がっている。

なお、アメリカ契約のNetflixだと基本的には日本語吹き替えや日本語字幕はないので、英語字幕で見ている。「これが英語の勉強になるのだ」とのエクスキューズで。実際に勉強になっているかどうかは不明。

ご参考)環境としては、主に、Amazon Fire Stick TVによるTV視聴とMacBookPro(Retina)で見ている、時々iPad Air(第二世代)。全く不満はない。

2017年3月2日木曜日

第二言語学習の科学とImmersionとLA LA LAND


本記事で言いたいことは「"LA LA LAND”を娘と映画館に見にいって嬉しかった」ということだけなのですが、照れ隠しがてらに前置きとして英語教育・勉強話をつけました。長くてすみません。

この1年間は自分と子供を使った「第二言語学習」の実証実験的な期間とも振り返ることができる。

ちょうど滞米10ヶ月目くらいのタイミングで名著とされる『外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か』を読んだら、自分たちが経験したり不思議に思っていたことがズバリ整理されていて大変有益だった。

この本においても、以前に読んだ元エール大学の斉藤先生の『世界の非ネイティブエリートがやっている英語学習法』の本でも、共通して強調されているのは語学学習におけるImmersion(イマージョン 解説はココ)のパワーである。

Immersionは唯一の解ではないし、Immersionだけでは不十分なのだが、この方法にはパワーがある、ということは自分たちの経験からも実感できる。

子供は学校で一日6時間のImmersionをすると英語脳になって帰ってくるし、自分も合宿に参加して6日間24時間英語しか使えなかった時は少しだけレベルアップした気がした。

ちなみに、ここケンブリッジ市の小学校には”SEI”という外国人の子供向けの英語クラスがあり、子供もそこに通っている。この名称は"Sheltered English Immersion”の略だ。科学的な知見を用いて教育を行うことに熱心なこの市がクラスの名称にImmersionを使っているのだ。

とはいえ、Immersionは留学や海外生活といった特殊な状況が揃わないとなかなか実現できない。

そこで代替的な方法として思い浮かんだのが「映画館で英語の映画を字幕なしで見る」ということ。「大画面・大音量に没入して英語を浴びる」のは英語のImmersion学習だ!という解釈だ。

これはこじつけているだけで、実際は「字幕なしでほとんど意味が分からず落ち込むだけ」だったりするのだが、やらないよりはいいと思う。

残念ながらアカデミー賞は逃してしまったが、娘(幼稚園年長)も「見たい!」ということなので一緒に"LA LA LAND"を見に行ってきた。(家でよく親にサントラを聴かされていることが原因かと思料)

ハンバーガー屋さんの看板が授賞式の混乱をネタに。


Immersionの効果はともかく「一緒に映画館で”LA LA LAND”を見た」という経験がPriceless。


ちなみに『外国語学習の科学』内で説明されている知見として、アメリカに移民してきた子の英語取得度合いは、親のアメリカ「文化」の選好度合いに比例する、というものがある。スペイン系や中国系だと、「アメリカ文化」を気にせず家で母国語のテレビだけ見て暮らすことも可能であり、そういう家の子供は英語の取得が遅いそうだ。当たり前すぎて知見というほどのことでもない気がするが、そういう点では子供の英語学習に貢献できているかなとは思う。 (事実としては、貢献どころか、ある部分ではもう抜かされつつあるが。)

2017年2月27日月曜日

アメリカでアカデミー賞2017を見た感想 会場にあの巨大企業CEOが…


10年前くらいから映画を見始めて以来、アカデミー賞に注目してきた。この一年はアメリカで過ごし、授賞式も(東海岸のテレビだけど)Liveで見ることができたので、日本から見ていた時には気がつかなかったことを中心に記録をまとめた。



1:現地の人は「アカデミー賞」と言わず「オスカー(ズ)」ということが多い。
街の人に「Academy Awards」と言ってもあまり通じない。Oscars という方が通じることが多く一般的に使われている気がした。(注:調査サンプル少ないので印象論)こうなると、なんかアカデミー賞と口にするのが恥ずかしくなってくる。

2:アメリカではアカデミー賞当日までに見ようと思えばノミネートされている全作品を見られる
これ、実は公開日に日米で大きなズレがある現状では日本では不可能なことだ。日本だと、アカデミー賞の結果を「フィルター」として使って、見に行く作品を決める、という流れになる。しかし今年は、作品賞ノミネート9作品のうち7作品を事前に見た(暇なんだね、と言われれば甘んじて受けます)上で賞レースを楽しむことができた。ありがたい。多分今年だけの僥倖。

3:(これも当然ながら)中継は午前中ではない
日本だと授賞式は月曜日の午前中から昼の時間に当たる。僕も仕事中にYahoo!ニュースを気にしていたものだ。こちらだと日曜日、東海岸で夜8時から12時すぎ。西海岸で夕方5時から9時すぎ、ということになる。酒でも飲みながら見るのに丁度良い。反省会やアフターも考慮すると、(当たり前ながら)現場のある西海岸の時間帯がベストだろう。

4:現地のテレビ中継はCMも面白い
日本だとWOWOWが中継するが、こちら2017年はABC放送だった。CMもオスカー仕様になっている。各社とも、若干政治的なメッセージを込めてきたりして工夫しているのが面白い。ちなみにトップのスポンサーはサムソンでVRグラスの宣伝をしていた。Women's Marchを宣伝に取り込むなど日本の電機メーカーを超えたグローバル企業になっていることを感じた。
Googleの特別CM(映画 "LION"を題材)や世論の再統合を訴えるキャデラックのCMも良かった。

5:今年の司会者(ジミー・キンメル)良かった
今年は本番の前からトランプ大統領に対するリベラルハリウッドのプロテストが話題だった。こうなると逆に「どの程度やるか?」が難しくなってしまうところだが、今年の司会者は逃げずに、かつ、いやらしくならずに、よくやっていたと思う。日本に対する自虐的な発言は嫌いだが、日本にはこの塩梅(あんばい)で知的な綱渡りをできる司会者は存在しない。

6:映画界の中心部にAmazonの影が
ゴールデングローブ賞の時もそうだったのだが、会場にAmazon CEOのジェフ・ベゾズが来ていた。これは単なる著名人ゲストとか、金を払って来ているという訳ではなくて、同社が映画そのものの制作を手がけ、その作品がノミネートまでされているためだ。逆に、そうでないと、この栄誉ある会場には入れない。Amazonの多方面への拡大(垂直統合)はここまで来ている、ということだ。Content is King を理解し、ここを抑えに来ているのだ。Netflixとの戦いが熱い。

7:結果について一言二言
作品賞は"Moonlight"。 
全般的に大本命だった"LA LA LAND"が苦戦した、という結果になった。トランプ効果でのリベラルバネ、あるいはド本命に対するアンチ票が働いてしまったのだろう。"Moonlight"も見たし、経緯やテーマからも佳作だとは思うけれど、作品賞は本命"LA LA LAND"で良かったと思う。ただ監督は32歳と若いことだし、まだまだ上を目ざすモチベーションが残って良かった、と解釈したい。

このブログでも過去に推した”マンチェスター・バイ・ザ・シー”が、主演男優賞は固いところだったとしても、脚本賞まで取れたのは嬉しい。事前に僕は「この作品を監督・脚本したケネス・ロナーガンには何か賞あげたい。まあ、監督賞はダミアン・チャゼルだろうから脚本賞が行ければな〜」などと家で呟いていたのだが、それが実現した。

この監督は偉いが、"マンチェスター・バイ・ザ・シー"という映画は主演のケーシー・アフレック(ケンブリッジ市出身・ベン・アフレックの弟。)のキャラクター造形が大きかった(だから賞を獲った)。実際のキャリアで苦労してるせいなのか、本人がそもそもダメな人なのか判然としないが、彼の絶妙な存在感がこの映画を押しあげた。

8:最後に
と、色々あったオスカーだが、最後の最後のオペレーション大混乱が全てを吹き飛ばした感。
この作品賞発表の失敗は歴史に残るだろうし、色々記事も出てるので深くは突っ込まないが、PwCは猛省してください懲戒モノの失態(笑)を。 
東海岸の深夜にこの後味の悪い幕切れで、寝つきが悪かった。 





2017年2月25日土曜日

ボストンの認可外映画学校


その名は、ブラットルシアター

渡米直後からずっと行きたいと思っていた、ハーバード近くの老舗名門映画館だ。

Webサイトで自ら"Boston’s unofficial film school since 1953"と誇っている。もちろん実際には、学校ではないのだけれど、それくらいの意気込みでの経営だということ。

名画座」の中の「名画座」であり、近所に住んでいたことのある村上春樹もエッセイ内で言及している。熱心な映画ファンならここを目的地に旅行を企画することもあり得るくらいの場所ではないかと思う。

「近いからいつでも行けるし・・」と思ってこれまでここに映画を観にいく機会を持たずにきたが、帰国が視野に入ってきたので焦って行って来た。

見たのは、名画「カサブランカ」。

この映画館ではバレンタインデー前後に「カサブランカ」を上映するなどという「なんとも粋(イキ)じゃないか。このヤロー!」という企画をやっていた。しかも、14日の夜はチケットが売り切れだった。

こういう現象がこの地域の「文化」だと思う。季節に応じた色々なイベントをやっており、アカデミー賞の授賞式の日はスクリーンでパブリックビューイングをするらしい。

マルチスクリーンの映画館と比較して、客席数250のこの小さなシアターを維持していくのは、容易ではないだろう。しかし、文化財としてぜひ残して欲しい。

最近、ハーバードスクエア周辺の老舗店舗が閉店になるニュースが多いので勝手ながら心配だ。


2017年2月22日水曜日

MITでスタートアップビジネスのコンテスト決勝を見る


先日、MITでのスタートアップコンペティションのファイナルイベントを見てきた。

8組が登壇して賞金100Kドル(1000万強)を争う。

無料で参加できるイベントだが、日本では経験できないタイプの空間であり、ビジネス人としてありがたい勉強の機会になった。

色々な面で気づき(あるいは、体感的な再確認)があったが、中核的なものは

1:アメリカは本当に多国籍の才能を引きつけている

2:世界にスケールするビジネスが前提になっている

という二点。

例えば象徴的なのは8チーム中のトップバッターだった中国出身のMITスローンスクールのMBA2年生(女性)。

この方、10才まで中国の寒村で育ったらしいが、今や米中の間のビジネストランザクションを支援するビジネスを立ち上げ、MBA2年生でCEO、多国籍のプログラマーやアドバイザーをチームアップして取り組んでいる。後のチームを見ても純粋アメリカ人は少なめで、いろんな国から来た頭のイイ奴があっという間にチームを組み上げて新しいビジネスにチャレンジしている。チャレンジャーには医者や博士号取得者もゴロゴロ。世界市場を狙うことはあえて強調するまでも無い前提として扱われている。

上記二点のダイナミズムを日本で実現するのは厳しい・・・のだが、そもそもアメリカ(沿岸部)以外にこんな環境を持つところは世界を見回してもあまり無いので過度に悲観しなくても良いとは思う。

ただし、日本でこの環境を作るのは無理だとしても、この会場に日本の存在感はほぼないという状況は寂しい。まあ、東海岸は日本から遠いし…。

あと、1月の大統領令に対して沿岸部の大都市であれほどの反対運動が起こった理由の一つはこういうことか・・・(=こうした魅力(競争力)に逆行してしまうから)、、と肌で感じた。



以下は、備忘録。

  • ビジネスアイデア自体はシードステージであることもあり、それほど斬新・革命的という感じではないし、プレゼン自体が洗練されているわけではない。ただし、上述した二点のダイナミズムの前にはプレゼンテクニックなどは瑣末なことに思える。
  • イベントはオープンで手作り感のある運営。開始は定刻より10分遅れ。この辺のエリアでは大体こんな感じ。しかしピッチと質疑の時間管理は厳格で、終わりは時間通りだった。
  • 8チーム中5チームは医療・ヘルスケア関係のビジネス。この辺りの土地柄だろうか。大学勤務医二人組のチームもあった。
  • このイベント自体のディレクターが女性。発表する起業家も8チーム中女性が3名。日本だとベンチャー業界は男性色が強い感じなので印象的。
  • 審査員による審査の間は、MITのビジネススクール(スローン スクール オブ マネジメント)学生バンド、The Rolling Sloans(このダジャレセンスは日本と変わらん。。)の演奏が四曲。何を演るかと思えば、エミネム(Lose yourself)、ホイットニー・ヒューストン、パール・ジャムなど。アメリカでも懐メロ回帰が進んでいるのだろうか。正直、あまり上手くなかった(笑)。
  • サイバーセキュリティビジネスを扱うチームのプレゼン内で、「今からMIT学内のWEBカメラをハック(乗っ取る)してご覧に入れます」といって実演を見せてくれたのはいかにもMIT、あるいはドラマのMr.ROBOTぽくて笑った。 
バンドの皆さん

2017年2月20日月曜日

ボストンの大学色々を巡る


ボストンは本当に大学が多い。

ハーバード、MIT、タフツの近くに住んでいるだけでも「お腹いっぱい」ではあるのだが、せっかくなので滞在中になるべく訪れておきたい、ということで、まずは、グリーンライン(市電)の西の終点にあるボストンカレッジへ。

カトリック系の大学で由緒ある名門らしい。建物が見るからに瀟洒(しょうしゃ)な感じ、軽い丘の上に立派な聖堂。

ちなみにローランドベルガー会長の遠藤氏がここのBS出身。

なんとなく学費高そうで白人比率が高い感じだった。



メイン校舎内部。普通に教室がある。

雪のキャンパスも素敵。



続いて、そこからさらに車で20分強の郊外、バブソンカレッジ

MBA業界では、起業家教育、ファミリービジネス研究で有名。トヨタの豊田章男CEOや、イオンの岡田CEOがここで学んだ。

こちらは林の中に佇む品の良い小大学という感じ。やはり「苦学生」はいなさそうな雰囲気だ。ただし、意外にも?リベラルなメッセージの張り紙や告知が多かったのは印象的。

(幾つも大学を見ていると、こういうところの温度感の違いを感じることができる。お金と余裕があると、公共心も高くなる、ということだろうか。)



キャンパス名物の地球儀。

学食の垂れ幕。さすがバブソン的なメッセージ。


最後に、ボストン都心にあるバンカーヒル・コミュニティカレッジ(BHCC)。

映画「グッド・ウィル・ハンティング」でロビン・ウィリアムズが先生をやっていた大学。ここは研究というよりも、職業訓練色が強いようだ。入ってすぐに「奨学金相談課」がある。主にセレブ大学を見慣れている自分にとってはこういう世界も勉強になった。雰囲気がまるで違う。

千葉の東葛地区出身の自分には、このBHCCの「庶民感」に妙に落ち着く。

都心の駅直結で便利。

国際色は豊か。

こんな張り紙、セレブ大学にはない。勤労者のための大学、っていう感じでいいです。



格差の国、アメリカらしく、個々の大学の差も大きく、本当に色々だ。

ただし、高額学費で美しい別世界キャンパスを作りそこに学生を閉じ込めてしまう大学は、教育として良いのかどうかと感じないでもない。

2017年2月18日土曜日

一期一会のウーバードライバー


ウーバーのドライバーさんとの出会いはまさに一期一会だ。

せっかくの機会なのでなるべく会話をすることを心掛け、これまで多くのドライバーさんと話をした。

概して、マイノリティの人がこの仕事をしている人が多い。専業ドライバーの人もいれば、気が向いた時だけのパートタイムジョブの人もいる。比率は印象では3:7くらいか。

人生色々、Uber仕事をしている人も色々である。愛想の良いドライバーばかりではないが、タクシーの運転手に比べれば概して話しやすい気がする。

印象深いドライバーとしては以下の人たちが居た。

少し陽光が強くなってきた最近。本文とは関係ありません。
  • ベトナムからの移民で正業があるそうのだが、高校生の子供を大学に通わせる資金を稼ぐために土日だけバイトでUberをしていたおじさん(高騰する教育費問題を感じた)
  • 珍しく白人中年だが、クラッシック系の音楽家である、との男性。(おそらく、音楽だけでは収入が安定しないのだろう)
  • 「お前日本人だろう、日本人は真面目だから大好きなんだ。オレは親が米軍に勤めて居て子供の頃は埼玉に住んで居た。親友の名前はケンジだよ。イケブクロ最高」という陽気な黒人。
  • 地元民の白人。仕事をリタイアしたおじいさん。この人道中とにかくずっと喋りっぱなし。「俺はプロのUberドライバー。この仕事は色々な人に出会えて勉強になるんだよ。ところでお宅はなんでボストンへ来たの?。。ああ私の娘は隣の市で小学校の先生をして居て、孫は・・・」ということで勘弁してくれというくらいに話すが、Uberのドライバー評価でも上位0.1%に入る満足度の持ち主だと言う。
  • 黒人で20年前にエチオピアから移住して来た人。最初はミネソタ州に家族を頼ってきて、寒かったそうな。僕の拙い英語を励ましてくれた。「俺なんか20年も住んでてもこんなレベルだからさ〜、心配すんな」
ちなみに、混雑した時間帯でなければ、費用は30分くらい乗っても15ドル前後だ。日本でマンツーマンの英会話教室に通えば30分で4000円近く取られるのは珍しくないことを考えれば「英会話教室に通いながら車で移動が出来る」とのリフレーミングが可能になる。
ということで、残りの利用機会が何度あるか分からないが、楽しみにしたい。


ちなみに、Uberは正確なデータが色々取れてしまうので、ビックデータを使った分析の対象になりやすい。ドライバーや乗客の人種差別的な行動が露わになったりすることもあるらしく、ちょくちょくその手の記事を見かける。African Americanだと成約に時間がかかる、とかいう暗い現実が(今までもあったのだろうけど)数字で見えてしまうのだ。

その点、こういう場面(=商売的な短期トランザクション)では日本人ということは有利に働く(こいつら真面目で金あるだろう、という先方からの見方がある)。先人に感謝するばかりだ。

2017年2月15日水曜日

ボストンで「ウーバーすごい」と思った7つのポイント


もっと早いタイミングでここに書こうと思っていたが、アメリカ(ボストン)に来て驚いたのはUberの普及ぶりと便利ぶりだ。僕は日本でもUberを使用したことはあったが、なんというか "桁"が違う。

我が家には車が無いこともあり、もう50回くらい使った。

今回の記事ではウーバーすごい!と思ったところを7点にまとめてみた。



まずはユーザーとして便利な三点。

1:ほとんどいつでもすぐに呼び出せる
とにかく街中に流している車が多いので、大体の時間帯と場所においてスマホで呼べば5分以内でやってくる。夜中の2時でも朝の5時でも大丈夫だった。苦戦したのはフェンウェイパークでの試合終了後の周辺(大混雑)と皆が正月モードになってしまうサンクスギビング(閑散)の時くらいだった。あと、郊外に行けば少し待つ時間が長くなる。

2:価格が安い
基本的にタクシーよりも安い。後述するUber Poolというライドシェアサービスを使えばさらに安い。また、ボストンは地下鉄の初乗り(距離定額)が300円近くするので、それを考えても大人2人だったらUberの方が安い、という状況が珍しくない。配車サービスは「贅沢品」ではなく「安い」のだ。またアメリカは高速が安くて早いので、80km先くらいまではUberで行ってしまう。ボストンからロードアイランド州まで余裕で行けた。

3:安心
アプリを使って地図で行き先を指定するので、遠回りされたりするリスクもない。運転手のレピュテーション管理機能もあるので、大概、タクシーの運転手よりも愛想がいい。タクシーも過去4回くらい使ったが、明らかにホスピタリティはウーバーの運転手達の方が良かった。 
ただし、ウーバーの運転手の経歴チェックは過去数年分の犯罪履歴をアップロードさせた指紋で調べているくらいらしいので、それをもって安全というかどうかは判断が分かれるだろう。実際時々、ドライバーの犯罪ニュースはある。 
あと、2回ほど「乗ってないのに課金された」と言うトラブルがあったが、メールでクレームすると事情の精査も無く、即返金してくれた。

続いて、Uberの経営がすごくて恐ろしい、ところを4点。Uberの経営を研究すると色々なことが見えてくる。

4:価格が需給によりリアルタイムで変動するシステムを確立している
需要と供給のマーケットメカニズムに基づき、同じ距離でも運賃が大きく変動する。事前に表示されるので、後出しジャンケンを受けることはない。何度か使っている学校からの帰宅ルートでいうと、安い時は6ドルくらいだが、雪が降っていて需要が高い時は14ドルくらいした。こうした調整を「合理的」と言えるかどうかは、立場と時間軸により異なる深遠な問題だが、「価格による調整」を愚直に実践していてすごいと思う。(アメリカは全般的に価格メカニズムが弾力的)

5:複数顧客のライドシェア(Uber Pool)で知らない人と割り勘相乗りができる
「相乗りしてもいいよ」というボタンで配車を依頼すると、同じ方向に向かう人が途中で乗ってくる。その分、時間が余計に掛かるが割り勘で安くなる。この機能はとてもポピュラーであり、僕もこちらが二人以下の場合は大体これを使っている。スタジアムでイベントがあるときなどは、大体スタジアムに向かう人と相乗りができる。また、朝晩の通勤は人の流れる方向が決まっているので、ここでライドシェアを使うと、10ドル以下でかなりの距離を乗れる。このためこれで通勤している人が少なくないらしい。運転手さんに「ライドシェアってチョコチョコ止まるから面倒臭くない?長距離一発の方が良くない?」と尋ねたことがあるが「うちら空気を運んでも意味ないんで、稼働さえ上がればいいんですよ」と言われた。確かにそうである。 
UberPoolが経路と顧客状況を検索して最適解を導き出している待ち時間の5秒くらい「テクノロジーによる最適化すげえぇ」との感慨が最高潮に達する。

6:ドライバー側へのアプローチもすごい。
Uberはドライバーの確保にもやたらと頑張っているようだ。ドライバーと言っても大体「普通の人」と言うことなのだが。その日の売り上げは当日に入金されるらしい。一番驚いたのは、ある運転手から聞いたことだが、車が無ければリースでUberが用意して貸してくれるらしい。徹底してドライバーから収奪してるように思えなくもないが、とにかくそこまでするか、の経営だ。ドライバー募集のWebサイトを見るのは、ビジネスモデル分析として面白い。

7:独占へとひた走るシェアの高さがすごい
ちなみに、ボストンでは、Lyftというほぼ全く同じ仕組みのサービスの会社も事業を展開しているが、値段的にもUberの方が安く、シェア的にも全く相手になっていないとのことだ。僕も最初は併用しようとアプリを二つ入れていたが、Lyftは削除してしまった。

以上、今でこそ当たり前にUberを享受してしまっているが、渡米当初はこの利便性、ビジネスモデルを驚異的に感じた。

日本に帰ったらUberをこういう感じでは使えないな、、と考えると残念ではある。ただし、僕は「だから日本でも同じように、とっとと規制緩和せよ」と思っているわけではない。 土壌となる諸事情が大きく違う。また、ユーザーとしては便利だが、長期的な社会全体の厚生への影響はまた別の話だ。

さて、漫然と乗るだけではなく、なるべくドライバーさんたちと話す、というフィールド調査もしてきたので次回はそのあたりの話を書く。どんな人がドライバーをしているのか、など。

2017年2月13日月曜日

新企業への依存で成り立つ米国日常生活


アメリカ生活も10ヶ月を超え、少し客観的に振り返るフェーズに入ってきた。

ニューイングランドの住宅街の雪景色


改めて考えてみると、うちの日常生活は以下の企業を抜きには欠かせない。これらの7社への依存度はすごく高い。当たり前すぎて意識しないくらいだ。

  • Google(Google Mapは異常に便利。鉄道・バスも検索可能でUberともリンク。クラウドのドキュメントは、街のコピー機からも出力できるという便利さ)
  • Uber(車を所有しない我が家には必須のサービス。日本での想像を超えた便利さ。別途書く予定)
  • Apple(うちは、Appleの生態系に取り込まれているもので。。)
  • Amazon(Amazonは日本でもすごいと思っていたが、こちらでは次元の違う発達を遂げている。これも別途書く予定)
  • Facebook(異国にいても友人知人と繋がれる便利さ。加えて、ニュースフィード機能は米国メディアへの入り口)
  • Netflix(動画ストリーミング。10月より契約してあっという間にハマってしまった。革命的サービスだと思う)
  • Spotify(音楽ストリーミング。今まで手を出していなかったが、12月に手を出したらあっという間にハマった。これだけスウェーデン企業。)

僕が前にアメリカに来たのは大学生の頃、1997年だった。この当時、上記の企業はApple以外はほぼ存在しなかった。(Amazonは1994年創業らしい。)今、上記会社のマーケットキャップ(時価総額)の合計は幾らになるのだろうか。

もちろん、消費者の目に見えないバックエンドでもいくつもの企業が台頭している(シスコシステムズなどのハードウェアメーカーなど)事や従来型の産業も依然大きな存在感がある事は理解するものの、消費のフロントを担う企業が上記の新興産業で占められている事に愕然とする(そして、ほとんどが世界展開していることも脅威)と同時に、新企業がここまでの存在に短期間で成長できるアメリカのダイナミズムを感じる。また、ビジネス人としては上記のサービスを分析的に体験できた事は良かった。

今後、本Blogでもこれらの企業のサービスについて少し記録・紹介していきたい。

2017年2月10日金曜日

Apple in Boston


マサチューセッツの冬は「りんご」が沢山売っている。

日本よりも種類が豊富で、少し「小振り」だ。これはアメリカ人が「りんごを丸かじり」する習慣があるからではないかと思う。ちょっとしたセミナーやビジネススクールの授業でも、お菓子のコーナーにりんごが山積みされている。りんごの方が菓子よりもヘルシーだと認識されているようで、小学校などもりんごを常備しており、「お腹が空いた子はこれを食べなさい」的な感じになっている。



皆、ろくに洗うこともせずにそのままかじっているようだ。シェラトンホテルのボールルームで行われているセミナーでスーツ姿の人が大半であるような場所であっても、りんごにかじりついている人が居た。なんともアメリカらしい光景だ。

僕もりんごが好きなので最近はおやつとしてよく食べている。そこで品種が気になってくる。大概スーパーには7種類くらい置いてある中で、やはり何と言っても「Fuji」が美味しく感じる。われながら日本人だなぁと思う。Macintosh, Gala, Empire, Jazz...その他色々な種類を食べたが、少なくとも生(なま)でかじることにおいてはFujiに優るものなし、と思う。

最近では主夫らしくオーブンを使った「焼きリンゴ」も作ってみた。我ながらなかなか美味しい。これは、Fujiではなく酸味の強いGalaで作ったけれど、美味しかった。

面白いところでは、こちらでは、リンゴの芯を抜く専用の器具もある。台所を預かる者としてとても興味深く、思わず購入してしまった。

食べるだけでなく、この地域ではApple pickingという「リンゴ狩り」もメジャーな娯楽らしい。しかし、我が家は車が無いので行けていない。

ちなみに、Appleつながりで話を広げると、ハーバードやMITのラウンジを見ると、8割はAppleのラップトップを使っている。なんとなくイメージ通りではあるけれど、Apple比率はとても高い。子供の学校にもMacがゴロゴロしている。ただ、よく言われるようにスマホのiPhone比率は日本が異常値的に高いようで、こちらでのスマホを見るとAndroidも結構多い。

あと、Appleストアはボストンにも当然あるが、これが日本の銀座にある店と驚くほどそっくりで、世界のフラット化というかグローバル企業のオペレーションの均質化を感じた。

2017年2月6日月曜日

Skype英会話で世界の先生と話す


12月からSkype英会話を再開した。

今回は提供社を変えてDMM英会話というところで始めた。ここの特徴は、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、などの講師が多い(その分なのか価格が安い)ことだ。リトアニア、ジャマイカ、ジンバブエ、アルメニア、イラクなどの先生とも話した。


GO! Patriots!


先生方、英語が母語でないにも関わらず、英語が達者で(CEFRでいうC2レベルに達している)、自分にとっては十分に先生になる。英語は白人のネイティブと話さねばならない・・・というような信仰は今の自分には全く無いし、むしろ色んな国の人と話ができて面白い。

先生方は高学歴で知的な人も多いのに「小国に産まれた」ということでご苦労をされている方が多い。極めて月並みな感想だが「日本は恵まれている」と思った。

レッスンの合間の雑談としては「どうやって英語を学んだのか?」と聞いたり「トランプ現象をどう見ているか?」などを話している。

英語の学び方についてだが、東欧の人たちにとっては「留学」など贅沢中の贅沢で、自国から出ないでC2レベルの英語を身につけた先生が多い。その先生たちがどうやって英語を身につけたのか聞くと以下の三点。
  • 子供の頃からやっている。セルビアでは小学1年生から英語の授業あり。ただし、講師になるような人は学校教育以外のなんらかの機会があった人が多い。親が熱心だった、という人は多い。
  • 衛星放送のテレビや漫画の英語コンテンツを死ぬほど見た(自国語のコンテンツが豊富ではない)
  • ビデオゲームのスカイプチャットで英語で話すことで学んだ(こういう人が結構いる。「今日はボストンで大きな大会があるんだよ」とハンガリー人に言われてスポーツかと思ったらテレビゲームの大会だった)
トランプ大統領関係の話題も盛り上がる。小国の人たちからは「アメリカさんはうちの国のことなんて相手にしてませんから。日本は少なくとも話は聞いてもらえるでしょ」と時々言われることがあり、確かにそうだよな、恵まれているな、とそんな時にも思う。


世界のニュースについての話をすると「ものの見方は国による、というよりも、知的階層に依存するな」と思う。大体同じような学歴や社会的立場の人は同じようなことを、国とは関係なく考えている。多くの国で、中産階級の崩壊とポピュリズムの台頭は問題になっているようで、英会話の先生ができるような人々はそれを憂いている感じだ。


トランプ、保守派の判事を指名!って感じでしょうか。Bostonに中国紙は多い。

2017年2月3日金曜日

街角で見かけたアメリカ(ボストン)


比較的最近撮影した写真から面白いものを紹介。

  • MIT近くのよく通っている映画館のトイレにて。ジェット式ハンドタオルに対する説明掲示。この地域における「環境問題」意識の高さ、「理屈っぽさ」が伺える。

  • ボストンのノースエンド、イタリア街のお土産屋の店頭にあったTシャツ。イタリア人エスニック自虐ネタと思われる。



  • MITのキャンパスでのイベント告知。"他の宗教はどんな礼拝をしているのか体験してみよう"というイベント。イスラム、キリスト、ユダヤの三つ。この地域でもひときわプログレなMITらしいイベントだ。



  • 我が家の前の駐車場にて。アメリカの閉塞感の表れか。下段に注目。Yesが消されて、No!と追加されているのが切ない。


  • 暮れのNYのお土産屋の店頭。いかにも雑な感じの作りのTシャツ。NYは基本はアンチDT色の強い町と思うが、アメリカ中から人が集まる街なので買う人もいるでしょう。ちなみに、ボストンやケンブリッジではほぼ見かけません。一度だけ帽子かぶった人見た、一台だけステッカー貼った車見た程度(笑)です。

2017年1月31日火曜日

休職中にしたいこと-ノンアルコール生活-


学生時代に酒を飲み始めてから、アルコールを楽しみに生活してきた。特に大きな失敗をしたり、体を壊した訳でもないのだけれど、休職しているのを機会に、「少し継続して酒を抜いてみよう」と思い立って、2017年元旦より酒なしで過ごしてきた。そして無事に目標の1ヶ月を完全にアルコールなしでの生活を達成。長らく休暇不足で働いてきた自分の肝臓にも「休職期間」を与えることができた。




最初の数日は禁断症状もなく意外にすんなりと始められたが、10日目前後に結構なObsessionが襲ってきたりはした。難しかったのは、癖がついている週末の飲酒、ご馳走の日の飲酒、パーティーでの飲酒などだったがこれらの「障壁」をクリアしての目標達成。

効果としては、よく言われることだが、肌の乾燥が改善し、睡眠の質は向上し、体重(腰まわり)が少し落ちた。

副作用?としては、今は主夫としてほぼ全て自分が料理をしているのだが、この料理意欲が少し落ちたかもしれない。美味しくビールを飲むために、面倒臭いけど一から麻婆豆腐作ろう、といった類(たぐい)の意欲が減退し、「まあ食べられればいいや」という気分になっている。

そもそも、東京で会社員として仕事をしていると、酒を一滴も飲まずに過ごすのは至難の技に(少なくとも自分には)思える。街中での飲酒は自由、コンビニやスーパーどこでも酒が溢れ、仕事の付き合いにも酒は欠かせず、酒の宣伝も多いし、酒に合わせたい美味い食材や料理も多い。

しかし、アメリカはそのほぼ真逆で、街の中では酒は飲めない、販売も割と厳しく普通のスーパー、コンビニでは必ずしも酒を売っていない、仕事の付き合いには酒は関係なく、どうしても酒のアテとして食べたいようなものもそれほど多くない。

先日訪問したMITメディアラボ内の模様


そういう意味では、アメリカでの禁酒生活はむしろ楽だったかもしれない。

酒を一生やめるつもりもないが「アメリカ生活での断酒」というのもなかなか面白い経験だった。

2017年1月28日土曜日

新大統領下の映画館で上映後に拍手が起きた"Hidden Figures"


昨年4月にアメリカに来てから10作ほど映画館で映画を見ているが、上映後に観客から「感動の拍手」が起こったのは(意外にも?僕にとっては)初めてだった。

その映画のタイトルは"Hidden Figures(隠されていた人々、みたいな意味?)"

有人宇宙飛行の黎明期にNASAの発展に陰ながら尽力した黒人女性エンジニア(というか数学者)達のキャリアを描いた、事実に基づく映画だ。



映画としては、それほどドラマチックでもなく、ご都合的な展開もある。さらに、黒人英語とサイエンス英語が聴き取れないので、正直申し上げて僕は中盤10分ほど寝落ちするくらいだったのだが、後半から最後に掛けてストーリーと観客はなかなかの盛り上がりだった。

話の舞台は約50年前。当時のアメリカが、ひどい差別問題を抱えながらも「科学の発展(宇宙飛行)のため、人種の垣根を超えて協力していこう!」と奮闘していたことがよく描かれている。NASAの中でもトイレやらコーヒーサーバーは人種別、論文に貢献しようが黒人だと名前は出ない、などまあそういう時代だ。しかしそれを、自らの手で変えていく時代でもあったのだ。

本作は、皮肉風に言えばいかにもリベラルハリウッド的な「ポリコレ」映画ではある。しかし、2017年、大統領側近が「オルタナティブファクト」などと言って事実から目を背ける時代となったコンテクストでこれを見ると「この時すでにこんなとこまで来てたのにそこから50年後のアメリカ、どうしてこうなった...」という感想ばかりが僕の頭を巡る。主人公が「科学者」というの点も、現状においては特別な意味を持ってくる。(これに関し、今最新のアメリカの知識人の話題としてこの記事あたりは読まれておくといいかもしれません)

多分、真面目なケンブリッジの観客達もトランプ政権ストレス(注)の中でこの映画を見て「そうだよ、これがアメリカだよ!アメリカの良いところってこうだったよな!」と思ったに違いない。だからこそ、上映後に拍手が起こったのだと思う。

そういう意味で、本作は2月発表のアカデミー賞(作品賞にノミネートされましたね)では台風の目になるかもしれない。実際、本作の興行収入は予想よりも好調らしい。なお、決して説教くさい暗い映画ではなく、ファレル・ウィリアムスの音楽でノリノリの明るい映画です。

(注)日本だとどういう報道になっているか全く見ていないのでわからないのだが、実際、現地でのトランプ大統領下での一週間は政治がグダグダで、やってることも「本格的にヤバいなこれは」と感じることばかり。