2017年3月20日月曜日

異文化マネジメント系ビジネス書ならこの一冊


Erin Meyer "The Culture Map"  邦訳 エリン・メイヤー『異文化理解力』


以下の記事を昨年の10月末頃に下書きしていたのだが、今まで投稿していなかったので、そのまま投稿する。

ボストンのバックベイからMITを望む


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掲題の本は、異文化理解の分野では評判の良い本だったので、渡米前にすでに日本語版を読んでいた。その際にも面白い本だ、とは思ったのだが、渡米後半年経って色々経験した上で、改めて英語版で読んでみて、以前に読んだ時の何倍も内容が染み入ってきた。

1:提示されているフレームワークも良い。
2:事例も多くて読みやすい。
3:筆者のスタンスにも共感できる。

最後の点は、おそらく著者(現在は欧州のINSEAD教授)が、比較的田舎育ちのアメリカ人女性で、フランス人と結婚してヨーロッパに住んでいる、という事がその背景にあるのだろう。

僕個人は、この半年はある程度意識して徹底的に「アメリカに浸かる」ことをしてきたのだが、世界は当然「アメリカ」だけではない。そろそろ、相対化を始めても良いタイミングだ。本書で、著者が少し突き放しつつ愛情を持った感じで、世界的視野の中で相対的に「アメリカの特徴」を語る内容が、とてもこの作業に役立った。

アメリカ人が「ローコンテクストコミュニケーションで明示的な割に、批判についてはオブラートに包むところ」とか「愛想はとてもいいのだが、それは本当に心を開いているわけではないこと」などが、彼女のフレームワークを使いながら良く整理されている。これまで半年間のアメリカ人とのおつきあい、観察を改めて整理し、腑に落とすことができた。

もちろん、本書は「アメリカ」だけを書いているわけではなく、出てくる事例としては「オランダに赴任したメキシコ人マネージャーの悩み」「ポーランドの工場を管理する中国人管理職」といったとても全球的な内容を扱っている。

日本についてもかなり言及されているが、その部分の記述が日本人として違和感を感じる部分がほぼない。このため、他の国の部分も概ね正しいのだろうな、と本書全体に信頼を置くことができる。この信頼度の高さには著者のビジネススクールでの生徒とのディスカッションが豊富に反映されているのだろう。それにしても、この手の研究ではいつものことながら、日本のユニークぶりには軽くため息が出る。

異文化マネジメントの分野には古くはホフステッドの研究から、いろいろな本があるが、読んだ中では(今のパーソナルな状況のせいもあろうが)一番しっくりきた。

今住んでいるケンブリッジについていうと、学校や職場などは単純に「アメリカ」のカルチャーとは言えない。アメリカ人が半分強でその他は他の国から集まってきているというようなケースが多い。ここの人はそれを「国連状態」とか「ワールドカップ」とか言っている。そういう中でコミュニケーションする上でのヒントを本書からたくさん頂いた。

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