2016年4月29日金曜日

(いろいろ調べすぎ、になる前の)ケンブリッジ市の第一印象




以下は、あくまで異邦人による一ヶ月時点の第一印象に過ぎない。印象はまた変わっていくとは思うけれど、こういう段階で一旦文字に書いておくと、後で振り返るときに面白いので、友人の皆さんへのケンブリッジ市の紹介も兼ねて書いてみたい。仕事柄、「統計的な観点からの検証もしないといけない」いう強迫観念はあるのだが、今回はまず印象論を中心にする。

ケンブリッジは、ボストンとチャールズ川を挟んで北の対岸にある別の市だ。これは日本に居るときから知識としてはわかっていたものの、実際住んでみないと感覚は分からないものだ。川を挟んだ隣、ということから「東京に対する川崎」「東京に対する船橋」など色々たとえを考えるのだが、強いてたとえるなら方位は違うけれど隅田川の対岸、という感じだろうか。あるいは、ボストンとケンブリッジの関係は大阪市と豊中市などに近いのではないか、と(西日本に詳しくないながらも)ぼんやりと思う。両市は実質的には一体、のように表現してもおかしくはないのだろうけれど、こちらに来ての実感としては両市は厳然として違う、という印象が今のところある。ケンブリッジは歴史も古く、偏差値の高そうな街なので、地元住人はボストン市に対してもプライドを持っていそうだ。
両市を隔てるチャールズ川

ケンブリッジ市といえば、ハーバード大学とMITだ。たった人口10万の街にこの二つの大学がある(実は他にもある)という世界的に見ても特異な街である。このため「石を投げればハーバードの人」という表現はあながち誇張ではない。実際に僕が娘のクラスのお父さんと話しても、近所の人と知り合いになっても普通にハーバードの研究者だったりする。まあ、東大の隣地区に住んでいると思えば、そういうことだろう。

これらの大学では、色々なイベントが数多く行なわれている。パブリックに開放されているイベントも多い。著名な学者と割と普通に同席できてしまう環境である。個人的には、早速参加したハーバードのセミナーで、Japan as No.1で著名なエズラ・ヴォーゲル先生が普通に参加者として聴講されていて絶句した。黙っていらしても知の巨人独特のオーラが出ていた。

話をケンブリッジ市に戻すと、一口に(それほど大きくない)ケンブリッジと言っても地域によって割とはっきりと趣きが違うのが面白い。ハーバードの近辺は古都大学街の雰囲気だ。対して、二駅しか違わないMITの近辺はいかにも工科大学らしいギーク臭がある。また、街中には「スクエア」が多数あり、それらの雰囲気は標準的なアメリカと言うよりはヨーロッパ風な気がする。また、隣接する別の「市」であるサマービル(ここにも名門タフツ大学あり)の街も落ち着いた素晴らしい雰囲気でこれから開拓したい。うちはノース(北)ケンブリッジという、少し大学街の雰囲気とはまた違う自然ありの素朴な場所にある。何しろ、水鳥やらリスが普通にうちの横を歩いてる。

どこも20〜30分で回れる距離感にもかかわらず、個性の違いが明確なのは面白い。街の中で大学の存在感は大きいのだろうが、決して「大学だけ」「スノッブなだけ」という感じでもない。うちの近くにもムスリムの集会場があるなど多様な人の生活感のある街でもある。とはいえ、おそらく、アメリカ全体の中では裕福で安全な特異な街なのだとは思う。


古い教会の多い町でもある。このくらい立派な教会が普通にゴロゴロある

ハーバードの中心部はさすがに観光地らしい雰囲気だが、それ以外のところ、特にうちの周りでは明らかな観光客を見かけることは少ない。落ち着いた街だ。実は、全体的に東京の西荻窪に似ている雰囲気も感じるのだが、それはそれでまた別に書いてみたい。

最後に気候。当然ながら気候は日本とは違う。ニューイングランド気候、とでもいうのか、体感してみて分かる独特さがある。気温の暑い寒いは気にしても仕方ないと思うのだが、1日の中で急速に変化する感じが独特で興味深い。午前が雨でも午後晴れる、晴れていてもすぐに雨になる。また2日くらい先の天気予報があっさり変わる。「風土」という単語を久しぶりに思い出した。

ということで、旅行先としても魅力的な場所だと思いますので、興味のある方はこの機会にお越しください。



追記1:エズラ・ヴォーゲル先生といえば、日本の経営学の分野では「日本的経営」のはずだが、最近の著作群を見るにむしろ「中国研究」の大家という位置付けらしい。出発前に予習としてヴォーゲル先生と橋爪先生の「鄧小平」(新書版)を読んだ。その本の写真の記憶があったために、斜め前方でニコニコと座っておられる人を見て「あれ、この人もしかしてエズラ・ヴォーゲル先生?」と気づくことができた。ちなみにこの新書は大変面白かった。

追記2:ケンブリッジ市は統計的にはこんな感じ。そのうち、統計や政治経済的な面から見たこの街のことも一度はまとめておきたい。

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