2016年10月31日月曜日

築地ワンダーランドinハーバード



"築地ワンダーランド"という映画が最近、日本で公開されている。

ハーバードの日本研究所で新たに所長になられたベスター先生が出演しているということで、この映画(築地ワンダーランド」の上映会(監督との質問セッション付)がハーバードのフィルムアーカイブであったので、見てきた。土曜日の夕方だったが、場内は8割の入りでアメリカ人の方多し。



こちらの自宅では日本のテレビを見る契約をしていないので、半年以上日本のテレビ番組を見ていない。久しぶりにスクリーンの大画面で見る東京の姿と東京の食(生鮮魚介、寿司、天ぷら・・)に圧倒され、あっという間に上映時間の1時間55分が過ぎてしまった。

海外生活経験から痛感している「東京の食は世界で最高だ!」という思いが、この映画でさらに強化された。それを支えているのが、この映画の主題である飲食店のバックにある食品流通システムなのだろう。東京では僕と同じ街に住んでいるらしい山本益博氏が映画の中で「築地は世界No.1ではない。No.1とは2位がいるということ。そうではなくて、築地は唯一無二」と言っていたが(夜郎自大なのは嫌だが)実際そうだと思う。

上映の後に監督の解説コーナーがある。自分もいろんな映画を10年近く見てきているので「なんでこういう編集にしてるのかな、意図は何なのかな」などと(僭越にも)思うことがある。質疑応答コーナーにより「なるほど、それでこういう編集になっているのか…」と鑑賞後に答えあわせができるのも嬉しい。

監督は「人と人とのふれあい、たましい、鼓動」を描くことに力点をおいた、とおっしゃっていた。一方で、自分は映画を見ながら「この日本の水産物流通の独特のバリューチェーンの分担の仕方は面白いなぁ。プライシング機能、フィルタリング機能、帳合い機能、これらをアナログな人の繋がり、人の頑張りで実現してるってところがありえんな…高密度集積の賜物だな」などと感じながら見ていた。僕は標準よりもかなり経済的な人間なのかもしれない。

あとは、久しぶりに日本の映像を見て思ったのは、日本の「張り紙文化」の"謎"さ。築地の市場の取引場に「魚を大切に扱いましょう」というような張り紙がデカデカとあったのだけれど、「ああ、こういうの日本ぽいな」と思った。個人的な解釈では、魚を大切に扱っていない事案があったから注意喚起のためにそう書いている訳ではなく、なんとなく漠然とした一体感醸成のために掲示しているような気がする。小学校から続く「標語」文化の延長だろう。アメリカでも「標語」は見かけるのだが、掲げている目的が日米では違う気がする。



くどくどと述べたが、最大の感想は、焼き魚(特に干物)食べたい、白魚の天ぷら食べたい、刺身食べたい・・・だった。大画面で見せつけられて困った。

2016年10月28日金曜日

2016年の秋、アメリカでこんな映画を見ている


日本で仕事をしていた際は、生活の息抜きとして「映画館」へよく足を運んでいた。

こちらでは「息抜き」という感じではない(なにしろ、字幕が無い、という修行モードになってしまうのでリラックスはできない)ものの、もう8年もやっている生活習慣なので、やはり映画は見ている。うちから徒歩10分のところのシネコンは火曜日は一律4.7ドルという素晴らしい企画をやっている。ありがたい。

日本公開とタイミングがずれている作品を、アメリカにいるために「日本に先駆けて見られる」というのもそれはそれで面白い経験だ。しかし、別にスピード競争をしても意味がないので、やはり字幕付で見てよく味わいたいと思う今日この頃ではある。

以下、秋に見た映画を記録代わりに掲載。

「ハドソン川の奇跡」

個人的に追い続けているクリント・イーストウッド監督作品の最新作。アメリカ在住中にこの監督の新作公開が見られるのは嬉しい。もうあと何本撮れるか、という域の長老だが、前作(アメリカン・スナイパー)に引き続き「アメリカで起きた事件を割と淡々と記録すること」を通じて"アメリカの何か"を記録しようとしているのかなと感じた。具体的には、今回は"911の強烈なトラウマ"とか。
繊細なバランスが持ち味の監督だから、しっかり理解するために字幕つきでもう一度見てみたい。今更ながら役者としてのトム・ハンクスがすごいと思った。




オリバー・ストーン監督、という先入観を持ちながら見てしまうせいか、なんだか随所の演出が古臭いように感じてしまう。題材は実話で現代的にはとてもシビアだ。他の監督(キャサリン・ビグローとか)がこの題材で撮ったらどうだったかな、と思ってしまう。英語の聞き取れない率も高く、それほど楽しい映画ではなかったが、最後の最後のアレは「おおっ」と思った。 
それにしても主役のジョセフ・ゴードン・レビット、こういう役柄の方向性で、彼は良いのだろうか。



荒野の7人、あるいは7人の侍のリメイク。評論家筋からの前評判があまりよろしくない。加えて、西部劇のせいか英語のセリフが全く聞き取れない。そこを割り引いても、実際に見終わって「この映画のテーマはいったい何だったの?」という疑問符が残った。「この7人は米軍の暗喩か?」とも思ったがそれは牽強付会過ぎるだろう。 
一つのトピックスとしては、イ・ビョンホンが脇役ながらも良い役で出ている。ハリウッドのアジア人俳優軽視はエンタメ界の暗部らいしので、そういう点では良いことだと思う。




あまり見るつもりはなかったもののご近所出身の「ベン・アフレック」が主役だから見に行くか、と思って見に行った。ベン・アフレックもアカデミー賞を獲った「アルゴ」やら、好演だった「ゴーン・ガール」など最近良いキャリアなのに、なんでこういう「これと言って取り柄の少ないアクション映画」に出るのか、と見る前から思っていたが、見た後の感想も同じだった。「会計士兼殺し屋」という新機軸以外に目新しいところなし。「セッション」のJ・K・シモンズが出てたのが目に止まったくらい。 
ベンアフは、来年、自身の監督作があるようなのでそれに期待したい。



追記:今シーズンのアカデミー賞レースでは、"セッション"の監督が作った新作、LA LA LANDというミュージカル作品がたいそう前評判が高い。これが楽しみだ。あとは、バースオブアネイションと沈黙は見ると思う。あとは、ディズニーのモアナ、、とか。。(以下略)

2016年10月24日月曜日

ケンブリッジのラーメン二郎で"夢を語れ"


隣町、Porterスクエアにその名も"Yume Wo Katere"というラーメン店がある。ボストン(正確にはケンブリッジ)に「ラーメン二郎」がある、として、日本人だけにとどまらずに有名な店だ。(めぐ二郎、品二郎、、との呼び方にならえば、ボス二郎or ケン二郎、とでも言うのだろうか。)一度、土曜日の夕方に店の前を通りがかったら、ものすごい行列ができていたことがあった。

僕としてはこれまで「アメリカであえて二郎に行かなくても・・・」という気持ちがあって、訪れたことはなかった。しかし、何となく「そろそろ・・・」という気分になり、金曜日のランチ前、12時の開店と同時を狙って行ってみた。幸運なことに、うちから20分ほどで歩いていける距離にある。到着すると、すでに10人以上の行列ができていた。待ち客に日本人ゼロで、体育会系っぽい米人学生が多い。さすが二郎。



ここは店名から示唆されるように「ラーメンを食べ終わったら自分の夢を発表しなければいけない」店だとガイドブックなどには書かれている。

お店に入ると、先にラーメン(12$)を注文する。その際に、「夢を語りますか?」と店員さん(アジア系の女性)に確認される。どうやらこの段階で「パス」を宣言してもいいらしい。初回でもあり、せっかくなので語ってみることにした。すると「旗」みたいなものを貰える。見た所、6割強のお客さんがこれを貰っていた。
いよいよ、ラーメンが出てくる。その前には「にんにく入れますか」のコールまである。野菜マシ、油マシもできるようで、他のアメリカ人客はやっていた。(他の客の野菜マシマシのタワーに仰天した隣席の女性が、爆笑して写真を撮っていた)





さて、実際に頂いてみても「かなり二郎」なラーメンだ。本格的なジロリアンのみなさんがどう評するかは知らないが、僕にとっては「十分に二郎」だった。7か月以上食べていなかったソウルフードの味に、忘れかけていた脳内麻薬が分泌され、しばしトリップした。



全汁まではできなかったが、完食して、「夢」を宣言して店を後にした。「夢」の宣言は、フロア係の人がMC風に仕切ってくれるので、お客さんが一体となってアメリカ風に楽しむことができる。満腹になったところで、夢をSpeak Outするというのもそれはそれで、面白いエクスペリエンスな気がする。

ちなみに、全汁すると「Perfect!!!」と店員さんが盛り上げてくれるので、、全汁を目ざす人が多いが、これは体に良くないことをencourageしている気がしないでもない。まあでも、行って良かった。また行くだろう。その時も夢を語るかどうかは検討中。

2016年10月22日土曜日

紅葉美しいタフツ大学のキャンパス


若い頃は全く予想していなかったが、比較的「大学」に縁の多い人生になっている。


これまで、日本や海外で色々な大学のキャンパスを見てきたが、その中でも「このキャンパスは素敵!」と思うのがタフツ大学だ。実は今の住居から距離的には一番近い。

この大学は(ハーバードとMITがある)ケンブリッジ市の自然が一杯の「丘の上」に建物が点在しており、美しいことこの上ない。そして、村上春樹はここで2年間教えていた。(別に文学の教育で有名な大学、というわけではない)

秋らしくなったので一眼レフで写真を撮ってきた。写真家としては腕が今ひとつだがご容赦いただきたい。ニューイングランドの秋は、芝生の緑色の上に赤や黄色が舞う。この色の組み合わせが日本に無い感じで美しい。



丘にある


ボストンを一望する眺め


サークルの説明会?らしきイベント。綺麗すぎ

シンボルマークの象の銅像

芝生の緑の上にオレンジが散る

少し余計なことかもしれないが、ここは、開かれた大学、というよりは、ちょっと隔絶されたスノッブでプレッ
ピーな雰囲気がある。こちらに来て、ニューイングランド地方発祥の、Vinyard Vinesラルフローレンの新しい版みたいな感じ)というアパレルブランドの存在を知ったが、ここの大学では、これを着てる人がちらほら居て、すごくイメージに合っていた。

2016年10月19日水曜日

こちらにおけるエグゼクティブエデュケーション(社会人教育)の世界の一端


あまりこのブログでは「自分の専門分野のお勉強」の事を書いてこなかったけれど、それなりにそちらの方もしている。致し方ないことではあるけれど、このブログだけからだと、家事と野球とアメリカ見物ばかりしているように思われるかもしれず、それは正しいような正しくないような微妙なところだが、まあブログなんてそういうものだと思うのでそれはさておき。

MIT(マサチューセッツ工科大学)が割と活発に社会人向けのショートコースを提供しているので、すでに幾つか通っている。内容面は本業で活用するつもりなのでここで書くことはしないが、いろいろな面で気づきがある。今回は大学院レベルの「社会人短期教育」がある種のツーリズムビジネスの側面も持っている、ということなどを紹介したい。

2〜3日間くらいの短期講座に合わせて世界各地からケンブリッジ(ボストン)に滞在し、勉強+観光をして帰る、ということをしているビジネスパーソンが結構いるのだ。もちろん、基本的には「勉強」が主だと思うが、それに付随してボストンやケンブリッジの街も楽める、という感じだ。大学は講座のみを提供し、ホテルその他の手配は参加者が自由にアレンジしている。(ハーバードのエグゼクティブエデュケーションは自前の瀟洒(しょうしゃ)な宿泊施設を持っており、宿泊込みでの講座を提供しているが、これはまた別の話)

これは人気の講座でキャンセル待ちだった


自分が参加したクラスの経験でも、文字どおり「世界中」から参加者が来ている。アメリカ人が半分強くらいを占め、残りの4割くらいが外国からの参加者という感じだ。これはボストン(ケンブリッジ)という土地に特徴的なことだろう。属性でいうと、日本ではあまりお会いできない北欧や南米系が多いのも印象的だ。アジアも居るが、少な目だ。(なので、ダイバーシティを確保したがるアメリカの学校運営にとっては「日本人」というだけで実は割と重宝される気がする。そこで「なんだ、こいつ全然英語話せないな」という風に失望させないことが大事かな、と)

クラスで一緒になった人を何人か具体的に挙げてみる。

  • 1:ドイツのメーカーからシカゴ現法に派遣されているドイツ人の現法責任者。シカゴから家族で来ていて、日中、自分は勉強、家族はボストンを観光(なので飲み会はゴメンなさい、と先に帰った)
  • 2:中国の上海から会社(自動車関連の米国企業)派遣で勉強に来ている中国人(いわゆる、ご褒美研修)
  • 3:アメリカのルイジアナの材木メーカーの社長夫婦(ボストン観光も楽しみにしてた)
  • 4:インドのバンガロールで人材育成会社を立ち上げた社長(正直、コンテンツの仕入れ、というか先端事例視察に来ている)
  • 5:オーストリアからの「毎年ケンブリッジに来て何週間か滞在して、いろいろ回って勉強してるんだよ」というNPOの人。
  • 6:米政府・米軍関係の人もちらほら。

等々実に色々な人がいる。意外に「社長」系が多い。これは後述する費用の影響もあるのだろう。会社からの「ご褒美研修」できている人もいれば、海外から「私費」できている人も普通にいる。そして、日本人は今の所この種の講座ではお目にかからない。(MITスローンのビジネススクールの方には多数いらっしゃいます)

費用について言うと、学費が1日あたり15万円強(講座次第でもっと)程度。これに交通費+滞在費を足すと、海外からこのためにここに来ると総額100万円くらいはかかると思うのだが、それで「"勉強兼観光"をしても良い」というビジネスパーソンの世界があるということを今回知った。(最近、報酬管理の世界では、日本のエグゼクティブが世界基準では給料が低い、という話もよく聞くが、その辺ともリンクした話かと思う)そして彼/彼女らは、「MITで勉強してきました」ということを多少はキャリア上のスプリングボードにできるのだろう。

設備は当然一流です


上記の背景から、クラスの方は内容面でそれほどの負荷をかけるようなものではなく、運営にはしっかりと「おもてなし」モードがある。とはいえ、留学生向けではないため普通の英語の世界で授業と討議が行われる。ただし、先に述べたように英語が第一言語ではない参加者も割と多いので、小学校のPTAのママ会よりは少しだけラク、と言った感じはある。これは容赦のない英語の世界なのだ。自分はといえば、自分の専門分野での教員の話を聞くのと、人と一対一で話をするのはなんとかなってきたが、ワーッと議論になった時に発言できない(瞬発力がない)のが課題。

さて、将来、日本人ビジネスパーソンがこういった講座にもっと参加する流れが増えるだろうか。費用と英語の問題があるが、興味深い点だ。

立食パーティーもついてます

2016年10月16日日曜日

ミニットマンバイクウェイで独立戦争の街、レキシントンへ


我が家のすぐ近くから、"ミニットマンバイクウェイ"という自転車道が北の郊外に向かって伸びている。ミニットマンとは、「予備役兵」という意味で、アメリカ独立戦争に立ち上がった兵士のことだ。ケンブリッジ市の端からアーリントン、レキシントン、ベドフォードへと続いている。全米のバイクウェイの中でも評価が高い道らしい。

短い秋の中の貴重な1日、自転車に乗ってライドに出ることにした。こういう時、水とお菓子を家から持って出かけるのを忘れない。日本であれば「途中のコンビニで買えばいいや」となるのだが、アメリカではその発想は通用しない、あるいはとても高くつく、ということをここまでの生活で学んだ。

愛車。かなりのスポーツタイプ。

この辺から本格的な自転車道。アメリカの革命的Rail-Trail


基本、こんな感じの自転車道がシンプルに続く。


途中にある町「レキシントン」は、アメリカ独立戦争が始まった町、"非道な"イギリス軍を追い出すべく、アメリカ人民が立ち上がった街、として有名だが、自分としては村上春樹の短編小説「レキシントンの幽霊」でその名前を記憶していた。この町で自転車を降りて、ビジターセンターに立ち寄ってみた。ここは観光地で「はとバス」みたいなツアー客(基本アメリカ人)で来ているが多い。古戦場の割には「日本だったら必ずあるゴテゴテした観光地看板がない(ので危うく素通りしそうになる)」「地形的にここが戦場になった理由がよく分からない(注:交通の要衝を巡ってとか、山の谷間でぶつかった、、といった理屈の感じられない平地)」という点ではやや拍子抜けだった。

レキシントンの博物館


ただし、ここの売店では「銃(マスケット銃の模造品)」が重要なお土産品だったり、(当時は基本奴隷だった)黒人の決起兵のことがクローズアップされていたり(この辺、さすがマサチューセッツ)、と社会科好きには興味深いことは多い。さすがに半年以上ボストンに住んでいろいろ気にしていると、アメリカ独立戦争のことが結構わかってきている。(アメリカの子供は絵本などでこの辺の話をかなり教わっているらしい)

売店の親切なマダムが教えてくれたところによると、このバイクウェイとは別の方向にナショナルヒストリックパーク(国立歴史公園)があり、映像上映での歴史解説などもやっているそうだ。そちらへも別途行ってみたい、と思う。

都市とは違う「ニューイングランドの秋」という感じ。


さらにバイクウェイを先へと進み、その先のゴールはベドフォード。ベドフォード市は人口1万人ちょっとだから、日本でいうと市ではなく、郡とかのレベルと思われる。完全に「郊外」という感じでまた雰囲気がいい。


Bedfordの終点

それにしても最高の自転車道だ。ほとんど木陰&平坦で、信号は3か所くらいしかない。湿気もないこの地方で自転車を飛ばすのは気持ち良いことこの上ない。このバイクウェイを作るのに尽力した方がいるらしい。途中に記念碑があった。この方に感謝したい。

この方に感謝。



追記:片道16km(10マイル)の道のりなので自転車で1時間程度。途中で写真撮りながらだと1時間30分くらい。

2016年10月13日木曜日

70mm上映でノーラン監督のインターステラーを見る

 
一応、普段は話題の汎用性を多少意識してこのブログ記事を書いているが、たまには、個人的趣味全開の投稿を。(映画に興味のない人は、飛ばしてください)

9月、近所のSommerville Theaterで、70mm映画祭というイベントがあった。日本では見ることのできない70mm上映は、映画好きには感動モノの企画だ。ちなみに今年の作品ラインナップは、「スノーホワイト」「ウェストサイドストーリー」「ベン・ハー」「トロン」「ワイルドバンチ」など。

何を見ようか…と考えたが、「インターステラー/Interstellar」を選んだ。実は、既に日本で二回も劇場で鑑賞済みなのだが、フィルム撮影へのこだわりを持つクリストファー・ノーラン監督の作品を70mmで堪能したい。



というか、「インターステラーを 70mm上映で観た」というのは日本だったら映画オタクの間では多少誇れる経験(ただし、それ以外の人からはどうでもいい経験に過ぎませんが)だと思う。タランティーノの作品(ヘイトフル・エイトとか)があれば、それでも良かったのだが無かったのが残念。


平日の夜19時30分からの上映で、劇場はウキウキの観客(自分含む)一杯。この空間に居られることが嬉しい。客層は結構若め。そしてここはいつもそうだが、ほぼ全員くらいに白人。

上映前に支配人が壇上に出てきて口上を述べる。「ノーラン監督は音響にも凝ってるからね〜。今日はニューイングランド随一の音響を持つ当館(注:本当かどうかは不明)は、サウンドシステムをノーランセッティングに調整済みです!」などと言っておりますます楽しみになってしまう。



感想。

70mmは、縦が少し大きい。画面に埋没できる感が少し違う。そして、この映画(というかクリストファー・ノーランの作品全般?)については、哲学的なテーマがどうこうよりも、思わせぶりな映像美と、劇伴の作曲家ハンス・ジマーの音楽センス、この二つがその魅力の大部分ではないかと思った。特に今回、字幕がなくセリフが追えないこともあって、余計にその認識を強く持った。そして「宇宙や物理の理屈をセリフで説明するSFを字幕なしで理解するのは自分の実力ではまだ無理」ということも再確認した。あとは、個人的には、女優のジェシカ・チャスティンが好きなのでこれを70mmで堪能できて良かった。



それにしても観客のアメリカ人は上映中によく笑う。「この映画なんて笑うところほとんど無いだろう」という作品ながら、家族のやり取りやTARSとの会話での「気の利いたセリフ」程度でよく笑っていた。

こんな上映を見て歩いて家まで帰れるのだから、良い場所に住んだものだ。

2016年10月10日月曜日

ボストン街角のコピーライターたち


アメリカ人は日本人よりもコピーライティングにこだわっていると思う。こちらに来てから面白いなと思うものはマメに写真を撮るようにしている。

地下鉄にて。「歩きスマホはやめましょう」をこんな感じで。@ダウンタウンクロッシング駅。

「銃反対」も言い方を工夫。@フェンウェイ付近。


Changeを「変化」と「釣り銭」でかけた。エスプリを感じる。@ハーバードスクエア

自分ゴト化の工夫。@フランクリン動物園

夏で暑いけども、店に来るなら服は着てこい、というライム(音韻)。@近所のコンビニ


こういういたずら好き。@Porter 駅


サイクリングロード@レキシントンあたり。短いながらもイイ。「競争じゃない。」


コピーライティングのセンスを吸収したいので、これからもなるべく写真におさめ続ける予定。

2016年10月8日土曜日

スゥイート・キャロライン - Good times never seemed so good?-


メジャーリーグの球場で歌う曲、というと7回裏の「Take me out to the ball game」が有名だ。これに加えて、ボストンレッドソックスの本拠地では、8回裏にニール・ダイヤモンドの「スウィートキャロライン」を歌う。春頃にボストン在住のマダムと話していた時にも「野球見に行って、スゥイートキャロラインとか歌って楽しいのよね〜」とおっしゃっていたので、ファンに愛されるイベントになっているのだろう。





僕が球場でこの曲を聴いた試合は、同点にされた直後の8回の裏、レッドソックスが3安打を固めて相手を突き放した後のタイミングだったので、盛り上がりも最高だった。

後から、この曲について調べてみると、二つのことが分かった。「キャロライン」とは今の駐日大使、キャロライン・ケネディのことだ。少女時代にあまりにかわいかったので、それに触発されてニールダイヤモンドがこの曲を作ったらしい。ボストンはケネディ家ゆかりの街なのであり得る選曲だとは思うけれど、日本人としては縁(えにし)を感じて嬉しい。もう一つは、この曲を球場で歌うようになったのは意外に最近(2000年以降?)らしいということ。

個人的には「この曲は歌詞の一節がとても良い。それが愛される理由なのではないか」と思った。具体的にはサビの箇所。

Sweet Caroline
Good times never seemed so good
I’ve been inclined         
To believe they never would   
Oh,Lord, no

2行目が良い。Good times never seemed so good 良い時というものは、良いようには見えないものだ。これ、ある程度歳を重ねて昔を振り返ることもあるようになった人には味わい深い言葉だと思う。

そして、I’ve been inclined to believe they never would はふた通りに解釈できる文章になっている。昔だったら入試の英文解釈の問題に出そうな感じだ。

一つの訳:僕は、良い時は良いようには見えない、という考え方そのものが違う、と思うようになってきていた。もう一つの訳: 僕は、良い時は良いようには見えないというように思うように(ますます)なってきていた。その時々で心境を重ねられるようになっている。



基本的には明るくバカっぽくみんなで合唱する曲ではあるのだけれど、この「シンプルながらも深い歌詞」がこの曲が愛される理由なのではないか。

さて、人生、Good timesは(その時にはそれほど)So goodには見えない、ものなのだろうか?

2016年10月6日木曜日

在外生活も半ばを過ぎて


滞米生活も予定の半分を過ぎた。

少し振り返ってみると、当初思っていたようにやれていること、思ったようにやれていないこと、色々ある。

ただし、家族・会社などから頂いた海外での1年間という期間を1日1日を大事に使うことは出来ているかなとは思っている。

ハイアニスハーバーのご来光



東京での多忙な生活から「一年間の休職」という立場に身をおいて感じたこととは、「"まとまった時間があればやってみたい"などと思っていることは、まとまった時間があってもなかなかできない。結局、場所や状況によらず日常の生活というかルーチン、習慣の中で進めることが重要だな」という、とても平凡なことだったりする。

そんな中、こちらのブログは、思いのほか、コツコツとした感じで記事を重ねてくることができた。基本的に面白いことを知り合いの皆さんとシェアするため、と、自分と家族への記録のために書いているため盛り上がりには欠ける気もするが、これからも気負わずに続けてみたい。

ちなみに現時点で、恋しい日本の食べ物TOP3

・立ち食いの天ぷらそば
・蒙古タンメン中本
・カウンターの焼き鳥、焼きとん屋


です。

JFKがヨットで遊んでいたボストン郊外の港ハイアニス。古き良きセレブ感のある街だった。

今回の記事タイトルはこの本へのオマージュ。

2016年10月3日月曜日

TEDx Cambridgeをボストンオペラハウスで見る


最近、有名なTED(正確に言うと、TEDxという派生コミュニティイベント)をライブで見た。(TEDについてはこちらなど)

TEDx自体は日本でも開催されていると思うが、TEDといえば、日本ではEテレで伊藤穣一氏(現:MITメディアラボ所長)がナビゲーターで番組をやっていたことが思い出される。TEDはこの地域発祥のイベントではないが、"そういう意味"では、「本場」と言えなくもない。

















会場はボストンオペラハウス。Cambridgeと銘打つのになぜチャールズ川を渡ったボストンの会場でやるのかとも思うが、会場はさすがに素敵で雰囲気は極上。




今回は半額で入場できる手を使って行ったのだが、率直に言ってそれでも値段は高い。TEDは非営利団体の活動だ。当日の費用以外にもこの活動全体への寄付が含むものと考えて自分を納得させた。

会場はほぼ満員の95%の入り。自分の周りの席は英語が母国語でない人が多い。左隣はスマホをいじりまくる中国人。右隣は東欧系の女性コンビ。前はアラブ系など。TED独特の傾向なのかはわからない。


内容について、ちょっとこれは独善的な意見かもしれないけれど、コンサル業界に身を置き、様々なトレンドを追っている(追っていた)自分としては、スピーチの内容が特に斬新とは思わなかった。そして、内容については、すべてYoutubeで公開される。

であるとすると「ライブ感」がその場で見るバリューになるのだと思うけれど、チケット価格の関係でメザニンの席を選んだ結果、「ライブ感」を堪能するためにはちょっと遠すぎた気がする。

望遠で寄ってますので実際は割と遠い席で観覧


第一スピーカーの方の発表内容に関して、MITが現在展開中の「自動車の自動運転におけるモラルジレンマ問題(ちょっと前に、マイケル・サンデル教授がやってたやつ。)」のWEB実験の着想が素晴らしいので、これはぜひ、15分くらい時間あるときに以下のリンク先からトライしてみてください。このサイト自体は技術的には普通だと思うが、こういうデータを集めて世に問うていくという発想がクールだと思う。