2016年6月5日日曜日

ケンブリッジで2016年のコメンスメントを見る-2- ハーバード編


ハーバードの卒業式の日は5月下旬の(ニューイングランドではありますが)「皐月(さつき)晴れ」だった。アカデミックガウンの人たちは暑そうで熱中症を心配したくらい。日本人の僕としては卒業式=3月の公式が染み付いていたが、新緑の中で行われる中に身を置いてみるとそれはそれで良いものな気がする。


HBSの会場での学位授与の模様


ハーバードは巨大な大学(在籍学生は院生まで合わせて2万人超)なので、卒業生一人につき親兄弟など2名は来るとしても数万人の大量の人がキャンパスを訪れることになる。加えて、この(普段は比較的分権的に運営されていると思しき)総合大学は基本この日1日ですべての学部や院の卒業式をやるそうだ。しきりに、"One Harvard!"と強調していた。

そんな量の人員に対して、この頼りない交通・宿泊インフラで一体どうやってロジをさばき切るのか、という方に興味があったが、それは伝統の厚みでノウハウが蓄積されているのだろうし、Commencement ディレクターが任命されている。1日見ていても「そつなく」こなされていたように思う。メイン会場はありつつも、街の中に分散したハウスやキャンパス別の会場も使われていた。




実務面でなるほど、と思ったところとしては、1:メイン会場はチケット制、2:テロ対策のためのセキュリティチェックは厳しい、3:ライブストリーミングが充実、4:そのストリーミングには常に英語の字幕がつく、というあたりだ。あとは、この日はトイレが不足する、ということから、普段は「部外者お断り」の建物内部が解放されているところが多数あった。おかげでビジネススクールのベイカーライブラリーの中身をかなり見ることができたのは収穫だった。

会場(屋外のテント)の雰囲気は、好天もありそれはそれは華やかでくつろいだ感じだ。近づけないだろうと思っていたスピルバーグのスピーチ(内容こちら)も着席エリアは入れなかったが、結局普通に見ることができた。殺気立った/格式ばった雰囲気はそれほどない。

スピルバーグ。足元がスニーカーだったとか。。

ここの卒業生の皆さんは大雑把に言って「エリート」だと思う。この卒業式に出た中から将来(2040年くらいかな)の世界の指導者になる人も少なくないだろうから、頑張ってほしいなぁ、と素直に思う。後日、別の場で「ここの卒業生はパブリックセクターや教職を避け、高給ばかりを追っている」との嘆きも聞いたが、あまりシニカルになっても仕方ない。若い人に期待したい。

図らずも、卒業式を見学することができたが、自分の年齢(アラフォー)はちょうど微妙なところだ。「学生に近い」とも言えないし「完全に先生(親)目線」とも言えない。せっかくだからできるだけ気持ちは若く、コメンスメントの励ましは自分へのものとして受け止めるようにしようと思った。

セレモニーがおおむね終わった午後4時頃、帰宅しようと校門の外に出て、華やいだ人波を歩いていたところ、三人くらいのアラブ系の人がイスラエルの対パレスチナ政策に抗議する札を出して静かにポツンと立っていた。周囲からは黙殺されていたけれど、この三人が今日ここにこの札を持ってくる気持ちと意味はそれはそれでわかる気がした。

次回の記事はMITにマット・デイモンを見に押しかける編。


追記:この卒業式の日の夜、所用があり、夜10時頃再びハーバードスクエアを徒歩で歩いた。「早稲田の卒業式の日の高田馬場の夜」的な阿鼻叫喚(あびきょうかん)の世界を実は若干楽しみにしていたのだが、夜の飲み屋街は「いつもより少し賑やか」なくらいであまり普段と変わりはなかった。大人な学生たちだなぁというか、逆に「日本の大学生が異常」なのかもしれない。

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