10年前くらいから映画を見始めて以来、アカデミー賞に注目してきた。この一年はアメリカで過ごし、授賞式も(東海岸のテレビだけど)Liveで見ることができたので、日本から見ていた時には気がつかなかったことを中心に記録をまとめた。
1:現地の人は「アカデミー賞」と言わず「オスカー(ズ)」ということが多い。
街の人に「Academy Awards」と言ってもあまり通じない。Oscars という方が通じることが多く一般的に使われている気がした。(注:調査サンプル少ないので印象論)こうなると、なんかアカデミー賞と口にするのが恥ずかしくなってくる。
2:アメリカではアカデミー賞当日までに見ようと思えばノミネートされている全作品を見られる
これ、実は公開日に日米で大きなズレがある現状では日本では不可能なことだ。日本だと、アカデミー賞の結果を「フィルター」として使って、見に行く作品を決める、という流れになる。しかし今年は、作品賞ノミネート9作品のうち7作品を事前に見た(暇なんだね、と言われれば甘んじて受けます)上で賞レースを楽しむことができた。ありがたい。多分今年だけの僥倖。
3:(これも当然ながら)中継は午前中ではない
日本だと授賞式は月曜日の午前中から昼の時間に当たる。僕も仕事中にYahoo!ニュースを気にしていたものだ。こちらだと日曜日、東海岸で夜8時から12時すぎ。西海岸で夕方5時から9時すぎ、ということになる。酒でも飲みながら見るのに丁度良い。反省会やアフターも考慮すると、(当たり前ながら)現場のある西海岸の時間帯がベストだろう。
4:現地のテレビ中継はCMも面白い
日本だとWOWOWが中継するが、こちら2017年はABC放送だった。CMもオスカー仕様になっている。各社とも、若干政治的なメッセージを込めてきたりして工夫しているのが面白い。ちなみにトップのスポンサーはサムソンでVRグラスの宣伝をしていた。Women's Marchを宣伝に取り込むなど日本の電機メーカーを超えたグローバル企業になっていることを感じた。
Googleの特別CM(映画 "LION"を題材)や世論の再統合を訴えるキャデラックのCMも良かった。
5:今年の司会者(ジミー・キンメル)良かった
今年は本番の前からトランプ大統領に対するリベラルハリウッドのプロテストが話題だった。こうなると逆に「どの程度やるか?」が難しくなってしまうところだが、今年の司会者は逃げずに、かつ、いやらしくならずに、よくやっていたと思う。日本に対する自虐的な発言は嫌いだが、日本にはこの塩梅(あんばい)で知的な綱渡りをできる司会者は存在しない。
6:映画界の中心部にAmazonの影が
ゴールデングローブ賞の時もそうだったのだが、会場にAmazon CEOのジェフ・ベゾズが来ていた。これは単なる著名人ゲストとか、金を払って来ているという訳ではなくて、同社が映画そのものの制作を手がけ、その作品がノミネートまでされているためだ。逆に、そうでないと、この栄誉ある会場には入れない。Amazonの多方面への拡大(垂直統合)はここまで来ている、ということだ。Content is King を理解し、ここを抑えに来ているのだ。Netflixとの戦いが熱い。
7:結果について一言二言
作品賞は"Moonlight"。
全般的に大本命だった"LA LA LAND"が苦戦した、という結果になった。トランプ効果でのリベラルバネ、あるいはド本命に対するアンチ票が働いてしまったのだろう。"Moonlight"も見たし、経緯やテーマからも佳作だとは思うけれど、作品賞は本命"LA LA LAND"で良かったと思う。ただ監督は32歳と若いことだし、まだまだ上を目ざすモチベーションが残って良かった、と解釈したい。
このブログでも過去に推した”マンチェスター・バイ・ザ・シー”が、主演男優賞は固いところだったとしても、脚本賞まで取れたのは嬉しい。事前に僕は「この作品を監督・脚本したケネス・ロナーガンには何か賞あげたい。まあ、監督賞はダミアン・チャゼルだろうから脚本賞が行ければな〜」などと家で呟いていたのだが、それが実現した。
この監督は偉いが、"マンチェスター・バイ・ザ・シー"という映画は主演のケーシー・アフレック(ケンブリッジ市出身・ベン・アフレックの弟。)のキャラクター造形が大きかった(だから賞を獲った)。実際のキャリアで苦労してるせいなのか、本人がそもそもダメな人なのか判然としないが、彼の絶妙な存在感がこの映画を押しあげた。
8:最後に
と、色々あったオスカーだが、最後の最後のオペレーション大混乱が全てを吹き飛ばした感。
この作品賞発表の失敗は歴史に残るだろうし、色々記事も出てるので深くは突っ込まないが、PwCは猛省してください懲戒モノの失態(笑)を。
東海岸の深夜にこの後味の悪い幕切れで、寝つきが悪かった。