2017年1月28日土曜日

新大統領下の映画館で上映後に拍手が起きた"Hidden Figures"


昨年4月にアメリカに来てから10作ほど映画館で映画を見ているが、上映後に観客から「感動の拍手」が起こったのは(意外にも?僕にとっては)初めてだった。

その映画のタイトルは"Hidden Figures(隠されていた人々、みたいな意味?)"

有人宇宙飛行の黎明期にNASAの発展に陰ながら尽力した黒人女性エンジニア(というか数学者)達のキャリアを描いた、事実に基づく映画だ。



映画としては、それほどドラマチックでもなく、ご都合的な展開もある。さらに、黒人英語とサイエンス英語が聴き取れないので、正直申し上げて僕は中盤10分ほど寝落ちするくらいだったのだが、後半から最後に掛けてストーリーと観客はなかなかの盛り上がりだった。

話の舞台は約50年前。当時のアメリカが、ひどい差別問題を抱えながらも「科学の発展(宇宙飛行)のため、人種の垣根を超えて協力していこう!」と奮闘していたことがよく描かれている。NASAの中でもトイレやらコーヒーサーバーは人種別、論文に貢献しようが黒人だと名前は出ない、などまあそういう時代だ。しかしそれを、自らの手で変えていく時代でもあったのだ。

本作は、皮肉風に言えばいかにもリベラルハリウッド的な「ポリコレ」映画ではある。しかし、2017年、大統領側近が「オルタナティブファクト」などと言って事実から目を背ける時代となったコンテクストでこれを見ると「この時すでにこんなとこまで来てたのにそこから50年後のアメリカ、どうしてこうなった...」という感想ばかりが僕の頭を巡る。主人公が「科学者」というの点も、現状においては特別な意味を持ってくる。(これに関し、今最新のアメリカの知識人の話題としてこの記事あたりは読まれておくといいかもしれません)

多分、真面目なケンブリッジの観客達もトランプ政権ストレス(注)の中でこの映画を見て「そうだよ、これがアメリカだよ!アメリカの良いところってこうだったよな!」と思ったに違いない。だからこそ、上映後に拍手が起こったのだと思う。

そういう意味で、本作は2月発表のアカデミー賞(作品賞にノミネートされましたね)では台風の目になるかもしれない。実際、本作の興行収入は予想よりも好調らしい。なお、決して説教くさい暗い映画ではなく、ファレル・ウィリアムスの音楽でノリノリの明るい映画です。

(注)日本だとどういう報道になっているか全く見ていないのでわからないのだが、実際、現地でのトランプ大統領下での一週間は政治がグダグダで、やってることも「本格的にヤバいなこれは」と感じることばかり。

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