"築地ワンダーランド"という映画が最近、日本で公開されている。
ハーバードの日本研究所で新たに所長になられたベスター先生が出演しているということで、この映画(築地ワンダーランド」の上映会(監督との質問セッション付)がハーバードのフィルムアーカイブであったので、見てきた。土曜日の夕方だったが、場内は8割の入りでアメリカ人の方多し。
こちらの自宅では日本のテレビを見る契約をしていないので、半年以上日本のテレビ番組を見ていない。久しぶりにスクリーンの大画面で見る東京の姿と東京の食(生鮮魚介、寿司、天ぷら・・)に圧倒され、あっという間に上映時間の1時間55分が過ぎてしまった。
海外生活経験から痛感している「東京の食は世界で最高だ!」という思いが、この映画でさらに強化された。それを支えているのが、この映画の主題である飲食店のバックにある食品流通システムなのだろう。東京では僕と同じ街に住んでいるらしい山本益博氏が映画の中で「築地は世界No.1ではない。No.1とは2位がいるということ。そうではなくて、築地は唯一無二」と言っていたが(夜郎自大なのは嫌だが)実際そうだと思う。
上映の後に監督の解説コーナーがある。自分もいろんな映画を10年近く見てきているので「なんでこういう編集にしてるのかな、意図は何なのかな」などと(僭越にも)思うことがある。質疑応答コーナーにより「なるほど、それでこういう編集になっているのか…」と鑑賞後に答えあわせができるのも嬉しい。
監督は「人と人とのふれあい、たましい、鼓動」を描くことに力点をおいた、とおっしゃっていた。一方で、自分は映画を見ながら「この日本の水産物流通の独特のバリューチェーンの分担の仕方は面白いなぁ。プライシング機能、フィルタリング機能、帳合い機能、これらをアナログな人の繋がり、人の頑張りで実現してるってところがありえんな…高密度集積の賜物だな」などと感じながら見ていた。僕は標準よりもかなり経済的な人間なのかもしれない。
あとは、久しぶりに日本の映像を見て思ったのは、日本の「張り紙文化」の"謎"さ。築地の市場の取引場に「魚を大切に扱いましょう」というような張り紙がデカデカとあったのだけれど、「ああ、こういうの日本ぽいな」と思った。個人的な解釈では、魚を大切に扱っていない事案があったから注意喚起のためにそう書いている訳ではなく、なんとなく漠然とした一体感醸成のために掲示しているような気がする。小学校から続く「標語」文化の延長だろう。アメリカでも「標語」は見かけるのだが、掲げている目的が日米では違う気がする。
くどくどと述べたが、最大の感想は、焼き魚(特に干物)食べたい、白魚の天ぷら食べたい、刺身食べたい・・・だった。大画面で見せつけられて困った。