ボストン郊外のとある住宅街で子供を習い事に預けて、ふと一人の時間が出来たある日の昼下がり。
メキシカンのファーストフードで一人ブリトー(注:やたら美味い)を食べていたら、カウンターの横に地元ユダヤ系コミュニティ向けと思われる、”Newton Jewish Journal” という新聞が置いてあった。
一瞬逡巡したものの、「こんなマニアックな新聞、ここで出会わなければ一生読むこともなかろう」と、暇つぶしがてら読んでみることにした。なお、自分は宗教関係の話には昔から興味があり、30代には勉強する機会も多かったので、普通の人以上には基礎知識がある。(中でも、ユダヤ教には興味を持っている)
まず、タイトルの横から味わう(写真参照)。"TAMMUZ 5776"これはユダヤ暦のことだろうなと思って調べてみるとその通り。TAMMUZは月の名前、5776は、ユダヤ紀元での年号だ。民族にとって年号は重要、と船戸与一先生の傑作「砂のクロニクル」から学んだ。
トップ記事の写真。イスラエルでアメリカからの帰還?を歓迎する人々。 |
Jewish Journal という大きな非営利新聞があり、その傘下の地域誌の一つとして、初めて本号が発行されたらしい。(新聞自体は二週に一回の発行、とある)
記念すべき創刊号のメインの記事は、この地域から家族ぐるみ(ペット込み)で、イスラエルに移住<いわゆるI(アイ)ターン>する家族の話。出発する空港への見送りと先方での出迎えの模様、不安もあるけど頑張ろう!的なまとめ方。少し調べたところ、"Aliyah"という「ディアスポラからの帰国運動」があるようだ。
全体的に、宗教を背景にした機関紙なので、日本のその手の新聞(特に信仰も無いのになぜかいろいろと読んだことがある僕・・)と似た雰囲気は感じた。
さて、一つ収穫だった記事は、当地マサチューセッツ州のユダヤ系女性(この州のトレジャラー、財務長官のようなものか)の活躍を描いた記事。この女性は男女の賃金格差を解消するために、熱心に活動しているという。便利なWEBサイトも作って全国的に注目されているらしい。
賃金といえば、人事コンサルタントとしての僕の専門テーマ。前から感じてはいたが、アメリカのイコールペイ運動の背景には、(ユダヤだけではないが)マイノリティによる格差是正運動の流れがある。このあたりは、日本からは死角になりがちなところだ。(こういうことを調べても実務にはあまり役に立たないながらも)滞在中に専門的にもう少し調べておきたい。この記事は結構いい情報をくれた。
僕はもともと「活字ならなんでも」という雑食系な人間だが、あらためて「なんでも読んでみるものだな」と思った。
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