生活してみた実感としてここケンブリッジ市は豊かであり、そこにあるハーバードもMITも見るからに立派だ。そして生活しているだけだと、なかなかここ近辺以外の場所に行く機会が少ない。しかしながら「ここがアメリカの標準ではない」ということを忘れないように、と常に意識している。
そんな中、The Boston Globeに「IVYリーグ大学に低所得家庭から入るとはどういうことか?(リンク先に記事あり)」というとても長い記事があったので英語の勉強がてら読んでみた。社会経済や教育に関心のある人には何がしかの参考になる部分もあるかもしれない…と思い、以下に大まかで気ままな要約を作った。
(なお、写真は内容とは無関係で、最近撮影したものから。被写体の良さに恵まれてはいるが、写真がもっと上手くなりたい)
-----ここから要約------
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- IVYリーグの大学(記事内の実例だと、ハーバード、エール、ブラウンなど)にも、奨学金により低所得家庭から進学してくる学生がいる。
- これには起源がある。2000年代に、トップ大学がダイバーシティ目的で、一定の所得以下で条件を満たせば「家庭負担一切ゼロ」という奨学金制度を相次いで導入した。これにより、従来ほぼ金持ちの子弟だけだった名門大学に(極端な)低所得家庭からの学生が入るようになった。
- これら制度は「ドアを開いた」という意味では良い。しかし、当事者の「第一世代」は入学後様々な苦難に直面している。
- 記事内で紹介されている学生の家庭環境としては、親がバスの運転手、ピザのデリバリー、溶接工、トレーラーハウスで暮らしていた、などで、家庭での日々の話題は金策など。移民第2世代くらいが多い。ある例では、友達の大半が高卒で地元の魚類加工工場に就職する環境の中、ボランティアのディベートクラブのコーチが「お前は頑張って名門大学へ行ってチャンスをつかめ」と後押ししたそうだ。(要約者注:リアルに「グッド・ウィル・ハンティング」な世界)
- こうした学生は地元の高校で総代だった、というような学問的には優秀な人々で、家族内では初めて大学に行くというような立場。
- 彼/彼女らは、自分たちが育った環境や社会的文脈と大学の生活環境があまりにも違うのでショックを受け、大学で孤立しがちである。
- 対して同級生は、すでにビジネスやNPOを立ち上げていたりするリア充(ただし、親のリソース使用)だったりして、劣等感に襲われる。
- 大学内で同級生に自分のバックグラウンドを話すと、びっくりされたり、気まずそうに避けられたりすることが多い。
- 自分は白人だったから少し友人に溶け込むのに有利かな、という学生の例。黒人の場合、黒人の同級生がいたので無意識に自分と同じ境遇だと思って話しかけたらその子の親は弁護士と医者だったとかで余計に落ち込んだ例。
- フルの奨学金で名門ブラウン大学に来たある学生の例では、カウンセリングを受けたくても15$の自己負担が苦しく受けられない。そして周りの人々は15$が払えないという苦しさがそもそも想定の範囲外であった。
- 大学やNPOも問題を認知し「ブリッジング(橋渡し)プログラム」を作ろうとしているが、逆に低所得学生を目立たせることになる部分もあり難しさを感じている。(ハーバードのこの担当オフィサーはご自身もニューヨークの低所得家庭の出身だそうな)
- 実は、豊かに育った人の方が、教授などに堂々と助けを求めやすい。貧困学生は、普通に相談すべきこと、できることを抱え込んでしまう傾向にある。ステータスの高い人と話すことが苦手なのだ。そして、職業としても渉外弁護士やらのプロフェッショナル職と生育過程で会ったことがない(ことが職業選択の幅を狭める)。
- 社会経済的成功には、学問的な素養だけでなく「Social Capital」が重要なのだが、貧困学生はそれが大事という認識を育む機会をこれまでに持てていない。
- こうした学生や家族は、教授よりもむしろ食堂のおばちゃんの方が話しやすい。ある印象的な例:実家から家族が一族の誉れである娘の大学を訪問して、食堂のおばちゃんに「この娘の面倒を見てやってくれ」と握手して、教授に挨拶せずに帰った。
- 当然ながら、当事者の学生たちは、アイデンティティクライシスすなわち「地元の自分」と「エリート大学生の自分」の分裂・統合不能に陥ることが多い。
- さらに困ったことに、大学で教育を受けるうちに、家族や元のコミュニティから「あいつは変わった」と言われ孤立するようになることも多い。
- しかし、こうした学生たちは自ら団体を立ち上げ、カミングアウトし、主張する行動を始めている。
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出所:What is it like to be poor at an Ivy League school? High-achieving, low-income students, often the first in their families to attend college, struggle to feel they belong on elite campuses.
上記は、私見抜きで記事にあったことのみでまとめた。なお、実際の記事は6名くらいの固有名詞の実例で作られていたが、順序も含め入れ替えている。それにしてもディテールが豊富な長い記事だった。WEB記事にコメントが現時点で180件強ついている。これはこれでどんな意見がついているのか興味深いがまだ目を通せていない。
少しだけ感想を書くとすれば、アメリカ固有の事情の部分もあれば、普遍的な部分もあるように思う。ちなみに、この記事によるとハーバードだと今、世帯年収650万がこの記事で話題にしている免除対象の水準。日本人としてこの水準をどう受け止めるか。
ちなみに、ちょうど同じタイミングで以下の記事も読んでいて、うっすらと関連性を感じた。
文化の違いは国家間よりも国内の方が大きい
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